居住する地区から大学までの時間的距離は高校生の 大学進学行動を左右するのか:サンプリング過程の 特性を活用したデータ分析による試論

近場に大学がないと、大学進学はどの程度抑制されるのか。日本では地方や郊外で人口減少が進むにつれて、その地域から大学へのアクセスは一層困難になると考えられる。したがって、このリサーチクエスチョンは今後ますます重要になるであろう。しかし、管見では、これまで日本では、改善の余地のある一つの研究があるのみで、直接的な分析がほとんど行われてこなかった。そこで、本研究では、既存の日本のデータを使いながらも、時間的距離の変数を独自に推算し、高校生の大学進学確率への影響を分析した。分析結果からは、時間的距離が大学進学確率と有意な負の相関を持つ傾向が観察された。のみならず、他の変数との限界効果の比較からは、この...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in生活経済学研究 Vol. 59; pp. 35 - 49
Main Author 深堀, 遼太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 生活経済学会 31.03.2024
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1341-7347
2424-1288
DOI10.18961/seikatsukeizaigaku.59.0_35

Cover

More Information
Summary:近場に大学がないと、大学進学はどの程度抑制されるのか。日本では地方や郊外で人口減少が進むにつれて、その地域から大学へのアクセスは一層困難になると考えられる。したがって、このリサーチクエスチョンは今後ますます重要になるであろう。しかし、管見では、これまで日本では、改善の余地のある一つの研究があるのみで、直接的な分析がほとんど行われてこなかった。そこで、本研究では、既存の日本のデータを使いながらも、時間的距離の変数を独自に推算し、高校生の大学進学確率への影響を分析した。分析結果からは、時間的距離が大学進学確率と有意な負の相関を持つ傾向が観察された。のみならず、他の変数との限界効果の比較からは、この大学進学確率の抑制効果は相対的に大きいと示唆される。加えて、こうした抑制効果は短大・専門・各種学校への進学とのトレードオフとして生じる部分が大きく、その傾向は女性より男性で顕著であることがわかった。こうした結果からは、奨学金政策が大学進学の地域格差の抑制にとって十分ではない可能性が示唆される。
ISSN:1341-7347
2424-1288
DOI:10.18961/seikatsukeizaigaku.59.0_35