大腿骨頚部骨折と骨粗鬆症との関係

【はじめに】  大腿骨頸部骨折は高齢者に多発する主要な骨折である。その発生要因として、年齢、性別、骨粗鬆症、頸部長などが報告されている。今回X線上にて大腿骨頸部の骨梁構造の変化から骨粗鬆症の骨萎縮度を判定するSingh指標を調査し、(1)片側例、 (2)両側例それぞれの骨粗鬆症の骨萎縮度の比較を行ったので報告する。 【対象・方法】  対象(1)平成14年1月から15年12月までに当院にて加療された50歳以上の大腿骨頚部骨折患者83例、外側骨折と内側骨折に分類。(2)平成6年9月から平成16年3月までに加療された64歳以上の両側骨折患者14例を対象。両側ともに外側骨折(以下LL群)、両側ともに内...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2004; p. 15
Main Authors 柚木, 剛志, 山下, 導人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2004
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2004.0.15.0

Cover

More Information
Summary:【はじめに】  大腿骨頸部骨折は高齢者に多発する主要な骨折である。その発生要因として、年齢、性別、骨粗鬆症、頸部長などが報告されている。今回X線上にて大腿骨頸部の骨梁構造の変化から骨粗鬆症の骨萎縮度を判定するSingh指標を調査し、(1)片側例、 (2)両側例それぞれの骨粗鬆症の骨萎縮度の比較を行ったので報告する。 【対象・方法】  対象(1)平成14年1月から15年12月までに当院にて加療された50歳以上の大腿骨頚部骨折患者83例、外側骨折と内側骨折に分類。(2)平成6年9月から平成16年3月までに加療された64歳以上の両側骨折患者14例を対象。両側ともに外側骨折(以下LL群)、両側ともに内側骨折(以下MM群)、左右異なる骨折(以下ML群)に分類。性別及び年齢(両側例は初回受傷時年齢)を調査。骨粗鬆症の骨萎縮度は、受傷時健側股関節X線正面像よりSinghの指標を用い調査、1から4度を骨粗鬆症、5から6度を正常に分類。外側骨折と内側骨折、LL群とMM群、ML群のSingh指標の比較を行った。 【結果】 (1)片側例 外側骨折:60例(男性:女性=1:11) ・平均年齢84.0±7.9 ・Singhの指標 1から4度:40例(66.7%)、5から6度: 20例(33.3%) 内側骨折:23例(男性:女性=4:19) ・平均年齢80.8±9.1 ・Singhの指標 1から4度:8例(34.8%)、5から6度: 15例(65.2%) 骨折型に対する骨粗鬆症の程度の比較に有意差を認 めた。(P<0.01) (2)両側骨折例(BR>両側骨折:14例(男性:女性=1:13)  ○LL群 5例(35.7%) ・初回受傷時平均年齢 83.6歳 ・受傷間隔の平均 27.8ヶ月(2年3ヶ月) ・Singhの指標 1から4度:3例、5から6度:2例  ○MM群 5例(35.7%) ・初回受傷時平均年齢 77.6歳 ・受傷間隔の平均 9.2ヶ月(0.8年) ・Singhの指標 1から4度:3例、5から6度:2例  ○ML群 4例(28.6%) ・初回受傷時平均年齢 86.3歳 ・受傷間隔の平均 29.3ヶ月(2年4ヶ月) ・Singhの指標 1から4度:3例、5から6度:1例 【考察】  片側例の検討では、転子間部の骨梁減少と外側骨折に関連性があり、内側骨折に比して骨粗鬆症との関連性が高いことが示唆された。また、外側骨折の平均年齢84.0歳、内側骨折80.8歳で両者に差は見られなかったものの、加齢に伴う外側骨折の発生率の上昇が示唆される。性別では外側骨折の男性と女性の比率1:11、内側骨折1:5となり、外側骨折はより女性に認められる結果から、外側骨折と骨粗鬆症の関連性がうかがえる。今回の検討から、大腿骨頸部における転子部の骨梁構造の変化が、大腿骨頸部骨折の骨折型の決定因子となると予測される。  両側例の検討では3群間で骨粗鬆症との関連性は認められなかったが、それぞれの初回受傷時平均年齢を比較すると、LL群83.6歳、MM群77.6歳、ML群86.2歳となりML群が最も高齢であった。また、ML群は内側骨折に続き外側骨折を発生した例は3例存在した。今回の調査では、初回に高齢で内側骨折を呈した場合、2回目は外側骨折を呈する傾向にあると考える。片側例から両側例の移行例は14例(4.9%)。うち1年以内に反対側の骨折を生じたものは6例(42.8%)、平均3ヶ月で受傷という結果となった。頚部骨折をおこした症例は再骨折に注意する必要がある。  今回、頚部骨折と骨粗鬆症の観点から、片側例の特徴と両側例の比率、発生頻度を調査・検討した。いずれにしても高齢者にその発生率が高く、受傷後のADL、QOLを阻害する。これらの予防として、転倒防止、ヒッププロテクターの使用などは発生率、再骨折を低下させるものと思われる。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2004.0.15.0