生体腎移植後に進行性の腎機能障害を認め、原発性高シュウ酸尿症が明らかとなった1例

症例は64歳男性.X-5年7月に近医にて熱中症を契機に腎機能障害を指摘され、X-4年11月に腎機能の低下で当院腎臓内科へ紹介.腹部CTで多発の腎結石を認めていた.その後も腎不全は進行し、X-3年6月より腹膜透析を導入.腹膜機能の不良により尿毒症出現し、血液透析の併用療法を経て、X-3年12月より維持血液透析へ移行した.X年1月に妻をドナーとする生体腎移植の希望で当科を受診し、同年5月に生体腎移植術を施行された.術後経過は概ね良好で、術後約3週間でCr 1.3mg/dl程度で退院となった.しかし徐々に腎機能の増悪を認め、術後1ヵ月半でCr 2.3mg/dlとなり移植腎生検を施行.移植腎病理では尿...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s337_3
Main Authors 安藤, 哲郎, 森, 剛, 有吉, 勇一, 岡, 大祐, 内田, 信一, 渕之上, 昌平, 小林, 肇, 添野, 真嗣, 久保, 隆史, 森, 崇寧, 蘇原, 映誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s337_3

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Summary:症例は64歳男性.X-5年7月に近医にて熱中症を契機に腎機能障害を指摘され、X-4年11月に腎機能の低下で当院腎臓内科へ紹介.腹部CTで多発の腎結石を認めていた.その後も腎不全は進行し、X-3年6月より腹膜透析を導入.腹膜機能の不良により尿毒症出現し、血液透析の併用療法を経て、X-3年12月より維持血液透析へ移行した.X年1月に妻をドナーとする生体腎移植の希望で当科を受診し、同年5月に生体腎移植術を施行された.術後経過は概ね良好で、術後約3週間でCr 1.3mg/dl程度で退院となった.しかし徐々に腎機能の増悪を認め、術後1ヵ月半でCr 2.3mg/dlとなり移植腎生検を施行.移植腎病理では尿細管腔、尿細管上皮にシュウ酸の沈着を認め、拒絶反応による所見は認めなかった.加えて蓄尿のシュウ酸は66.9mg/日と上昇しており、最終的には遺伝子診断にてGPHPR遺伝子に変異を認め、原発性高シュウ酸尿症2型(PH2)の診断となった.PHに対する腎移植は禁忌であるが、本症例は移植前の腎生検は未施行で、腎障害の進行が比較的緩徐であったこと、シュウ酸沈着による腎以外の全身症状を認めていなかったこと等から、移植前に診断に至ることができなかった.今回我々は生体腎移植後にPH2の診断となった症例を経験したので、文献的考察とともに報告する.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s337_3