脳卒中片麻痺患者における手すり支持椅子立ち上がりテストの有効性についての検討

【はじめに】  椅子からの立ち上がり動作は、高齢者や身体障害者におけるADLの重要な要素のひとつであり、この動作を用いた簡易体力評価法に30秒椅子立ち上がり(CS-30)テストがある。しかし、CS-30は手による支持動作を制限した立ち上がり動作の回数を測定するため、立ち上がり動作に困難をきたしやすい虚弱高齢者や身体障害者に適した評価法でない可能性がある。 今回、脳卒中片麻痺患者を対象にCS-30テストと手すり支持による30秒椅子立ち上がり(HSCS-30)テストを測定し,両テストの難易度、下肢運動機能,歩行能力,ADL能力との関係について検討した。 【対象・方法】  対象は、入院・外来及び通所...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2006; p. 16
Main Authors 中川, 浩, 平野, 真貴子, 津田, 拓郎, 内田, 由美子, 矢倉, 千昭, 有村, 圭司, 高柳, 公司, 大場, 潤一, 曽田, 武史, 大石, 賢, 野口, 浩孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2006
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2006.0.16.0

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Summary:【はじめに】  椅子からの立ち上がり動作は、高齢者や身体障害者におけるADLの重要な要素のひとつであり、この動作を用いた簡易体力評価法に30秒椅子立ち上がり(CS-30)テストがある。しかし、CS-30は手による支持動作を制限した立ち上がり動作の回数を測定するため、立ち上がり動作に困難をきたしやすい虚弱高齢者や身体障害者に適した評価法でない可能性がある。 今回、脳卒中片麻痺患者を対象にCS-30テストと手すり支持による30秒椅子立ち上がり(HSCS-30)テストを測定し,両テストの難易度、下肢運動機能,歩行能力,ADL能力との関係について検討した。 【対象・方法】  対象は、入院・外来及び通所リハを利用している脳卒中片麻痺患者25名(男性18名、女性7名)、平均年齢66.0±11.4歳、発症から3ヶ月以上経過し口頭指示を理解できるものとした。年齢、性別、病型、麻痺側、下肢Br.stage、高次機能障害・失語症・認知症の有無、CS-30テスト、HSCS-30テスト、6m歩行時間、Motor Assessment Scale(MAS)、Barthel Index(BI)を評価、測定した。CS-30テストは両手を胸の前で組んだ状態、HSCS-30テストは非麻痺側上肢で手すりを支持した状態で、数回の練習の後、30秒間の立ち上がり回数を測定した。6m歩行時間は、測定線から2メートル手前からスタートし直線6mの努力性歩行時間を測定した。 【結果・考察】  1.CS-30テストおよびHSCS-30テストは,年齢との相関がなく,性別,麻痺側,高次脳機能障害・失語症・認知症の有無による差がなかった。  2.CS-30テストとHSCS-30テストは,高い相関が認められた(r=0.88,p<0.01)。  3.CS-30テストで1回も立ち上がれない者は6名,HSCS-30テストでは2名であった。  4.CS-30テスト及びHSCS-30テストは,下肢Br.stage(それぞれ,r=0.51,p<0.01;r=0.52,p<0.01)、6m歩行時間(歩行可能23名)(r=-0.74,p<0.01;r=-0.76,p<0.01)、MAS(r=0.90,p<0.01;r=0.74,p<0.01),BI(r=0.66,p<0.01,r=0.63,p<0.01)と有意な相関が認められた。 HSCS-30テストは、CS-30テストと関係が高く、難易度が低い課題であり、下肢運動機能、歩行能力、ADL能力を反映するパフォーマンステストである可能性が示唆された。また、HSCS-30テストは、手すりを支持することにより椅子に座るときの衝撃を緩和することが出来るため、腰痛や骨折などのリスク防止になると考えられる。 【結論】 HSCS-30テストは、脳卒中片麻痺の下肢の運動機能、歩行能力、ADL能力を反映する簡便で安全性の高いパフォーマンステストであると考えられる。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2006.0.16.0