変性腰椎辷り症における前方辷りの程度と自覚症状の関連性

【はじめに】変性腰椎辷り症は40歳以上の女性に好発し、加齢とともに脊柱管狭窄症を呈するとされている。発生頻度はFarfanらは検屍体の4.1%、Sandersonらは腰痛を主訴に来院する50歳以上の女性の27%と報告している。一方で運動療法に関する報告は少なく、辷りの程度と自覚症状との関連について調査した報告は渉猟し得なかった。そこで、本調査の目的は変性腰椎辷り症における辷りの程度と自覚症状との関連を調査することとした。【対象と方法】対象は2014年1月から2015年7月までの期間に当クリニックにて変性腰椎すべり症と診断され加療を行なった132名の中、X線側面像とMRIによる精査が行われている...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 210
Main Authors 奥貞, 見奈, 近藤, 征治, 杉木, 知武, 川嶌, 眞之, 川嶌, 眞人, 辛嶋, 良介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_210

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Summary:【はじめに】変性腰椎辷り症は40歳以上の女性に好発し、加齢とともに脊柱管狭窄症を呈するとされている。発生頻度はFarfanらは検屍体の4.1%、Sandersonらは腰痛を主訴に来院する50歳以上の女性の27%と報告している。一方で運動療法に関する報告は少なく、辷りの程度と自覚症状との関連について調査した報告は渉猟し得なかった。そこで、本調査の目的は変性腰椎辷り症における辷りの程度と自覚症状との関連を調査することとした。【対象と方法】対象は2014年1月から2015年7月までの期間に当クリニックにて変性腰椎すべり症と診断され加療を行なった132名の中、X線側面像とMRIによる精査が行われているものとした。除外基準は40歳未満、腰椎圧迫骨折や分離症の合併、腰椎手術の既往とした。その結果、本調査における対象は44名(男性3名、女性41名)、平均年齢67歳(42-89歳)となった。方法は後方視横断的に行い、診療録より腰痛、下肢痛、痺れの有無を調査した。辷り率はX線側面像よりMeyerdingの分類を基に下位椎体に対する辷り椎体後縁の距離で算出した。狭窄率はMRI矢状断での脊柱管中心部分のスライスにおいて、辷り椎体部近傍の脊柱管距離に対する脊柱管最狭窄距離で脊柱管狭窄率を算出した。その際狭窄部位における脊柱管の圧迫部位を脊柱管前方要素、後方要素、前後要素、辷り要素に分類した。辷りの程度による症状の相違を検討するため、辷り率が20%以上(MS群)21名と20%未満(SS群)23名の2群に分類した。統計学的処理はDr. SPSS Ⅱ for windows 11.0.1 Jを用い、辷り率、脊柱管狭窄率、年齢は正規性に従って差の検定を症状と画像所見についてχ2検定を行ない、有意水準は5%未満とした。【結果】差の検定では、辷り率はMS群平均24.6±4.4%、SS群15.7±2.7%で有意にMS群の辷り率が大きかった(p<0.01)。狭窄率はMS群60.2%、SS群62.5%、年齢はMS群平均68歳、SS群65歳と有意な差を認めなかった。χ2検定では下肢痛の有無においてのみ有意な差を認め、MS群では下肢痛あり12名、9名、SS群では下肢痛あり6名、17名とMS群において有意に多かった(p=.037)。その他、腰痛、痺れ、狭窄部位においては有意な差を認めなかった。【考察】Stephenらは193名に対する局所麻酔下での腰椎手術時の発痛源に関して調査していた。椎間板線維輪への刺激では腰痛が、神経根の伸長や圧迫により殿部痛と下肢痛が、椎間関節の周辺の軟部組織により腰痛とまれに殿部痛が誘発されたと述べている。このことから、辷りの程度が強くなると椎間孔の狭小化による神経根への刺激を誘発しやすくなり、下肢痛の有症状率が増加すると推察した。運動療法においては、辷り率が増大し下肢痛を有する場合は椎間孔を拡大する操作を行なうことで症状の軽減を図れる可能性があると思われた。【倫理的配慮,説明と同意】本調査はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、研究の実施に先立ち当院倫理員会の承認を得た後に実施した。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_210