成人ASD 当事者の支援ニーズをいかに就労支援に反映させるか 成人ASD 当事者を対象としたアンケート調査の結果から

成人ASD 当事者が就労支援を受けた経験を支援改善に活かし、効果的な支援を構築するため、当事者に対して実施したアンケート調査の結果から、就労支援に当事者のニーズをどう反映させるかを考察した。就労支援サービスでは、年代による求める支援内容の差や、当事者の多様性を踏まえた支援、当事者と支援者の信頼関係の構築が求められていることが示された。現職では事務職や軽作業従事者が多く、接客業務に就く者もいた。職場で支援を得ているのは現職の6 割程度で、その効果として仕事の能率が上がることが最も指摘された。一方、職場での困難については、自分から相談できない・同僚らの理解不足等の理由から、解決に至らないケースが多...

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Published in自閉症スペクトラム研究 Vol. 15; no. 1; pp. 5 - 16
Main Author 沼崎, 麻子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会 30.09.2017
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ISSN1347-5932
2434-477X
DOI10.32220/japanacademyofas.15.1_5

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Summary:成人ASD 当事者が就労支援を受けた経験を支援改善に活かし、効果的な支援を構築するため、当事者に対して実施したアンケート調査の結果から、就労支援に当事者のニーズをどう反映させるかを考察した。就労支援サービスでは、年代による求める支援内容の差や、当事者の多様性を踏まえた支援、当事者と支援者の信頼関係の構築が求められていることが示された。現職では事務職や軽作業従事者が多く、接客業務に就く者もいた。職場で支援を得ているのは現職の6 割程度で、その効果として仕事の能率が上がることが最も指摘された。一方、職場での困難については、自分から相談できない・同僚らの理解不足等の理由から、解決に至らないケースが多かった。仕事のやりがい・楽しさを問うと、「達成感」や「対人業務・関係がないこと」との回答が多い一方、対人接触場面を指摘する者もいた。仕事意識については、20 代において現職を好きだと感じる傾向があり、過去職を振り返った時と比べ、現職で対人業務や後輩指導を希望する率が増えた。特性については、同僚には一般的なASD 知識と個人の特性を把握することが望まれていた。当事者は自身が持つ当事者像とメディアが描く当事者像にギャップも感じていることも示された。以上から、当事者のニーズを支援に反映させるためには、①当事者に特化した、当事者の多様性を反映できる評価指標に基づく支援、②障がいの有無を問わず従業員全体を包摂する支援が必要であることが導かれた。
ISSN:1347-5932
2434-477X
DOI:10.32220/japanacademyofas.15.1_5