経鼻内視鏡での前・中頭蓋底へのアプローチ法

経鼻内視鏡下手術は, 副鼻腔炎だけではなく腫瘍性病変に対しても用いられ, 副鼻腔という空間内からその周辺領域へ適応を拡大している. 正中ラインでの拡大は前頭蓋底から中頭蓋底, さらに斜台や上位頸椎まで拡大しており, 水平ラインでの拡大は眼窩や翼口蓋窩, 側頭下窩, さらに破裂孔から側頭骨錐体部など後頭蓋窩へもアプローチが試みられている. いずれの適応拡大した領域でも, 基本的には両側前鼻孔から内視鏡と手術器具の出し入れをするため両者の出入り口は近接している. そのため, 適応が拡がるにつれ操作部位は遠く深くなり, 内視鏡の視軸と手術器具の長軸方向が平行に近づくため, 先端操作部位の干渉だけでは...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 124; no. 8; pp. 1159 - 1165
Main Authors 井伊, 理恵子, 阿久津, 博義, 宮本, 秀高, 田中, 秀峰, 田渕, 経司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.08.2021
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2436-5793
2436-5866
DOI10.3950/jibiinkotokeibu.124.8_1159

Cover

More Information
Summary:経鼻内視鏡下手術は, 副鼻腔炎だけではなく腫瘍性病変に対しても用いられ, 副鼻腔という空間内からその周辺領域へ適応を拡大している. 正中ラインでの拡大は前頭蓋底から中頭蓋底, さらに斜台や上位頸椎まで拡大しており, 水平ラインでの拡大は眼窩や翼口蓋窩, 側頭下窩, さらに破裂孔から側頭骨錐体部など後頭蓋窩へもアプローチが試みられている. いずれの適応拡大した領域でも, 基本的には両側前鼻孔から内視鏡と手術器具の出し入れをするため両者の出入り口は近接している. そのため, 適応が拡がるにつれ操作部位は遠く深くなり, 内視鏡の視軸と手術器具の長軸方向が平行に近づくため, 先端操作部位の干渉だけではなく鼻外の手元での干渉も起こりやすくなり, 操作の安全性が低下する. また, アプローチに必要な術野展開も安全に手術を進める上での重要な要素である. 本稿では, 前頭蓋底および中頭蓋底へのアプローチに必要な解剖学的目印と必要な手技について述べる. 前頭蓋底アプローチでは, 前方ライン切除のために前頭洞単洞化と鶏冠の切除方法, 後方ライン切除のための蝶形骨洞単洞化, 側方ライン切除のための前・後篩骨動脈の止血切断方法と眼窩内側壁の切除手技が必要である. 中頭蓋底アプローチでは, 内頸動脈の損傷を回避することが最も重要な要素であるため, その同定方法を知っておく必要がある. 頭蓋底手術では重要な血管や神経をどのように同定し処理していけば病変にたどり着くかを考え, 疾患によってはある程度の重要構造物でも移動させたり犠牲にしたりさえしてアプローチする必要が出てくるため, 疾患の特性を十分考慮した上で操作を進めていかなければならない. また工夫次第では, 同じ病変でも鼻副鼻腔の解剖構造や機能温存を考慮した術野の展開が可能であり, 耳鼻咽喉科医としてアプローチ法を考慮するとき常にこれらを意識することが望まれる.
ISSN:2436-5793
2436-5866
DOI:10.3950/jibiinkotokeibu.124.8_1159