日本における下顎に対する顎変形症手術の実態調査 1. 手術術式, 骨片固定法および顎間固定について

「1. 緒言」 顔面骨, とりわけ下顎骨の位置を骨切り術によって意図的に動かし, 咬合と顔面形態を改善しようという試みは古くから行われてきた. しかし顎変形症の手術が口腔外科手術のなかで, 主要な地位を占めるに至ったのは, TraunerとObwegeserの論文1,2)が発表され, 口内法によって下顎枝を矢状に分割することにより, 顔面頸部の皮膚に瘢痕を残すことがなく, また歯列を含む骨片の移動後も切離された骨片間に大きな接触面積が得られ, そのため従来の方法に比べ術後の後戻りが少なく, 安定した成績が得られることがわかってからのことである. 下顎枝矢状分割術が臨床に応用されだした当時は,...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 5; no. 1; pp. 76 - 83
Main Authors 山口, 万枝, 式守, 道夫, 橋本, 賢二, 福田, 廣志, 上田, 吉生, 松下, 文彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本顎変形症学会 30.04.1995
日本顎変形症学会
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ISSN0916-7048
1884-5045
DOI10.5927/jjjd1991.5.76

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Summary:「1. 緒言」 顔面骨, とりわけ下顎骨の位置を骨切り術によって意図的に動かし, 咬合と顔面形態を改善しようという試みは古くから行われてきた. しかし顎変形症の手術が口腔外科手術のなかで, 主要な地位を占めるに至ったのは, TraunerとObwegeserの論文1,2)が発表され, 口内法によって下顎枝を矢状に分割することにより, 顔面頸部の皮膚に瘢痕を残すことがなく, また歯列を含む骨片の移動後も切離された骨片間に大きな接触面積が得られ, そのため従来の方法に比べ術後の後戻りが少なく, 安定した成績が得られることがわかってからのことである. 下顎枝矢状分割術が臨床に応用されだした当時は, 分割された骨片間の固定は鋼線によっていた. そのため固定力は強くはなく, 顎間固定を行い骨分割部の創傷治癒を待つのが常であった. しかしながら整形外科領域で使用されだしたプレートとスクリューを顔面骨にも応用しようという試みもなされた. すなわち顔面骨専用のプレートとスクリューが開発され骨折や顔面骨の手術に多用されるようになり, 現在では顎変形症の手術にも応用されるようになった. 特に上顎では大多数の症例でプレートとスクリューによる骨片固定法が応用されていると思われる. ただし下顎においては上顎と状況が異なり, 骨片固定法に絡んで顎関節, 下歯槽神経の問題もあり, 切離骨片の固定法についてはしばしば議論されるところであるが, 本邦における骨片固定法の実態調査についての報告はない. そこで我々は全国の主要な顎変形症治療施設に顎変形症の手術のうち下顎骨の手術に限定し, 手術術式, 切離骨片の固定法, その使用材料, 顎間固定の有無, 期間, 術前術後の歯科矯正治療, 周術期の問題点などについてアンケート調査を実施し多くの施設から回答を得た. そのうち今回は手術術式と切離骨片の固定法, 顎間固定の有無および顎間固定期間について検討したので報告する.
ISSN:0916-7048
1884-5045
DOI:10.5927/jjjd1991.5.76