歩行立脚期における大殿筋上方線維・下方線維の筋活動

【目的】臨床場面において歩行立脚期の不安定性を呈す症例を多く経験する。歩行立脚期での骨盤安定性に関与する筋の中で、大殿筋は重要な役割を持つとされている。大殿筋は内転・外転軸を大きく上下に覆う筋であり、機能上、上方線維と下方線維に分類され、股関節伸展・外旋以外に上方線維は外転作用を、下方線維は内転作用を有していると言われる。大殿筋の機能特性として筋線維によって作用が異なることが分かっているものの動作時での報告は少ない。今回、先行研究をもとに歩行立脚期における大殿筋上方線維・下方線維の筋活動の相違を、表面筋電図を用い測定・検討する。 【対象】対象は、本研究の目的・方法を説明し同意を得た整形外科的疾...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 28; p. 126
Main Authors 浅香, 満, 小林, 真, 岡田, みゆき, 市川, 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2009
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.28.0.126.0

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Summary:【目的】臨床場面において歩行立脚期の不安定性を呈す症例を多く経験する。歩行立脚期での骨盤安定性に関与する筋の中で、大殿筋は重要な役割を持つとされている。大殿筋は内転・外転軸を大きく上下に覆う筋であり、機能上、上方線維と下方線維に分類され、股関節伸展・外旋以外に上方線維は外転作用を、下方線維は内転作用を有していると言われる。大殿筋の機能特性として筋線維によって作用が異なることが分かっているものの動作時での報告は少ない。今回、先行研究をもとに歩行立脚期における大殿筋上方線維・下方線維の筋活動の相違を、表面筋電図を用い測定・検討する。 【対象】対象は、本研究の目的・方法を説明し同意を得た整形外科的疾患のない健常男子5名(24.6±4.6歳)とした。 【方法】筋電計マルチテレメーターシステムWEB-5000(日本光電工業株式会社)を用い双極導出法にて歩行立脚期の大殿筋上方線維および下方線維の筋活動を測定した。電極位置は先行研究を参考に、上方線維は上後腸骨棘の2横指下と大転子外側端を結ぶ線上の筋腹上、下方線維は坐骨結節の5_cm_上の筋腹上とした。歩行は直線快適歩行とした。 【結果】すべての対象において上方線維の活動が優位であり、下方線維の活動はわずかであった。 【考察】歩行立脚期での大殿筋上方および下方線維の活動は、上方線維の活動が優位であり、下部線維においてはほとんど活動がみられなかった対象もあった。藤本らによると、前方ステップ動作時には支持側の上方線維で持続的な筋活動を認め、下方線維の筋活動はあまり認められなかったと延べており、今回の歩行立脚期においても同様の結果が得られた。歩行において大殿筋は、踵接地時に最も強く働くと言われ、体幹・股関節の屈曲方向へのモーメントを制動する。また、立脚期では大腿骨頭の回転中心に対して、上半身重心が内側に位置している為、股関節内転モーメントが生じる。このことから、股関節伸展・外転作用のある上方線維が内転モーメントに拮抗するように優位に活動したと考えられる。 【まとめ】今回の結果から、歩行立脚期では大殿筋上方線維が重要であることが示唆され、上方線維と下方線維において筋活動に違いがみられた。このことから、日頃我々が用いている評価方法や大殿筋に対するアプローチの再考が必要と考えられる。今後、大殿筋に対するアプローチ方法の違いによる線維別の筋活動を検討し臨床につなげていきたい。
Bibliography:126
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.28.0.126.0