椅子からの立ち上がり動作開始時における筋活動の変化
【目的】 椅子からの立ち上がり動作は、床反力作用点(以下COP)の後方移動により開始される。しかし、この時期を扱った研究は少なく、COPの後方移動を引き起こす力学的要因は明らかにされていない。これについて、本動作は力学的に安定した状態から開始されるため、COPの後方移動には外力ではなく筋活動が寄与すると考えられる。そこで本研究では、椅子からの立ち上がり動作時のCOPおよび体幹・下肢筋活動の変化を同期して測定することで、動作開始に寄与する筋活動を明らかにすることを目的とした。 【方法】 対象は本研究の趣旨を説明し同意を得た健常成人5名(男性4名、女性1名、全て20歳)とした。開始肢位は体幹直立位...
Saved in:
Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 216 |
---|---|
Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_216 |
Cover
Summary: | 【目的】 椅子からの立ち上がり動作は、床反力作用点(以下COP)の後方移動により開始される。しかし、この時期を扱った研究は少なく、COPの後方移動を引き起こす力学的要因は明らかにされていない。これについて、本動作は力学的に安定した状態から開始されるため、COPの後方移動には外力ではなく筋活動が寄与すると考えられる。そこで本研究では、椅子からの立ち上がり動作時のCOPおよび体幹・下肢筋活動の変化を同期して測定することで、動作開始に寄与する筋活動を明らかにすることを目的とした。 【方法】 対象は本研究の趣旨を説明し同意を得た健常成人5名(男性4名、女性1名、全て20歳)とした。開始肢位は体幹直立位、下肢各関節90°屈曲位とし、自然な速度で椅子からの立ち上がり動作を30回行った。そして、この時のCOPと筋活動を測定した。COPは、座面と足底面に床反力計(UMC社製UJK-200C)を設置することでその波形を記録した。筋活動は、導出筋を腹直筋・脊柱起立筋・大腿直筋・半膜様筋・前脛骨筋・ヒラメ筋とし、表面筋電図(日本光電社製LEG-1000)を用いて記録した。更に、対象者内で筋活動を一般化させるため、基線動揺が少ないものを抽出・整流化し、これを加算平均した。そして、各被験者の安静座位とCOP後方移動前後0.1秒の筋活動の積分値について、対応のあるT検定を行い比較・検討した。なお、本研究の実施にあたり埼玉県立大学保健医療福祉学部倫理委員会の承認を得た。 【結果】 安静座位に比して、COP後方移動前後の脊柱起立筋活動量の積分値が有意に低下していた(p<0.05)。大腿直筋・腹直筋については、安静座位時とCOP後方移動前後で有意差を認めなかった。半膜様筋については、COP後方移動前後の波形動揺が大きく、検討が困難であった。 【考察】 椅子からの立ち上がり動作開始には、下腿前面筋である前脛骨筋活動量の増大だけでなく、下腿・体幹後面筋であるヒラメ筋・脊柱起立筋活動の抑制が寄与していることが示唆された。特に、本動作開始時の体幹運動においては、腹直筋活動量の増大よりも脊柱起立筋活動の抑制が寄与していると考えられる。 【まとめ】 椅子からの立ち上がり動作開始時の運動力学的変化を捉える際、主動作筋の活動だけでなく、姿勢筋の抑制にも着目する必要がある。 |
---|---|
Bibliography: | 216 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_216 |