健常群と腰痛群の片脚立位時の寛骨傾斜角度と股関節回旋角度の関係性
【目的】 腰痛の原因の一つに,D.Leeらは片脚立位時に支持脚の寛骨が前傾し仙腸関節のLocking機構が働かず,荷重を効率的に伝達できない荷重伝達障害という概念があると報告している.片脚立位時の寛骨傾斜と股関節回旋角度には一定の傾向があると臨床上感じるが,片脚立位時の寛骨傾斜角度と股関節回旋角度に関する研究は少ない.そこで,本研究は健常群と腰痛群の片脚立位時の寛骨傾斜角度と股関節回旋角度の関連性を調査し,腰痛との関係を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は腰痛がない者(以下,健常群)10名(年齢27±2.8歳)と荷重下で腰痛が再現できる者(以下,腰痛群)15名(年齢30±2.6歳)...
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| Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 222 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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| Subjects | |
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| ISSN | 0916-9946 2187-123X |
| DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_222 |
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| Summary: | 【目的】 腰痛の原因の一つに,D.Leeらは片脚立位時に支持脚の寛骨が前傾し仙腸関節のLocking機構が働かず,荷重を効率的に伝達できない荷重伝達障害という概念があると報告している.片脚立位時の寛骨傾斜と股関節回旋角度には一定の傾向があると臨床上感じるが,片脚立位時の寛骨傾斜角度と股関節回旋角度に関する研究は少ない.そこで,本研究は健常群と腰痛群の片脚立位時の寛骨傾斜角度と股関節回旋角度の関連性を調査し,腰痛との関係を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は腰痛がない者(以下,健常群)10名(年齢27±2.8歳)と荷重下で腰痛が再現できる者(以下,腰痛群)15名(年齢30±2.6歳)とした.疾患名は問わず,神経症状を呈するもの,測定時に疼痛が生じるもの,下肢に既往がある症例は除外した.また,被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の主旨を十分に説明し,同意を得た上で研究を行った.測定項目は支持脚寛骨の傾斜角度(以下,傾斜角度)と股関節回旋角度(以下,回旋角度)の2項目とし,静止立位と安定した片脚立位(遊脚側の股関節,膝関節90°屈曲位)の3秒間を2回測定し,その平均値から変位量を算出した.測定機器は三次元動作解析装置EvaRT4.0(Motion Anaiysis製)を用いた.傾斜角度は上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線と水平線のなす角度とし,回旋角度は大腿骨内側上顆,大腿骨外側上顆を結んだ線と前額面のなす角度とした.統計学的検討にはt検定およびピアソンの相関係数を用い,有意水準は5%とした. 【結果】 傾斜角度は健常群(-5.8°±4.6)と腰痛群(4.6°±6.6)で有意差があり,回旋角度は健常群(3.3°±1.7)と腰痛群(-2.4°±4.4)で有意差を認めた.支持脚の寛骨が後傾するほど支持脚の股関節が内旋し,前傾するほど外旋した.また,傾斜角度と回旋角度に負の相関を認めた(r=-0.64). 【考察】 傾斜角度と回旋角度との間に負の相関が認められたことにより,支持脚の寛骨が後傾するほど股関節が内旋し,前傾するほど外旋することが示唆された. D.Leeは片脚立位時に仙骨がうなづき,寛骨が後傾することで仙腸関節のLocking機構が働くが,支持脚の寛骨が前傾するとLocking機構が働かず,荷重伝達機構に障害があると述べている.支持脚の寛骨が前傾して股関節が外旋した被験者は,腰痛群の中にのみ認められた.よって,支持脚の寛骨が前傾し股関節が外旋した被験者は荷重伝達障害が原因となって腰痛が出現していることが推察された. 【まとめ】 片脚立位時に支持脚の寛骨が後傾するほど股関節が内旋し,前傾するほど外旋した.支持脚の寛骨が前傾して股関節が外旋する荷重伝達障害と推測される被験者は腰痛群の中にのみ見られた. |
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| Bibliography: | 222 |
| ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
| DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_222 |