異常構音を有する口蓋裂患者の語音弁別能に関する検討

口蓋裂患者の中には,鼻咽腔閉鎖機能不全や構音器官の形態的異常は改善されているにもかかわらず,異常構音が改善されない症例が存在する。その原因のひとつに語音弁別能の関与が考えられている。語音弁別能とは音声を正確に聴き分ける能力である。語音弁別能は,他人の音声または録音された自分の音声を弁別する能力である外的語音弁別能と,自分自身が現在産生している音声を弁別する能力である内的語音弁別能にわけられる。本研究では異常構音を有する口蓋裂患者の外的語音弁別能と内的語音弁別能を評価し,口蓋裂患者の異常構音残存と語音弁別能との関連を検討した。 1.正常構音に対する外的語音弁別能と異常構音に対する内的語音弁別能の...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 35; no. 3; pp. 186 - 194
Main Authors 新井, 伸作, 中村, 誠司, 長谷川, 幸代, 中間, 友美, 笹栗, 正明, 松村, 香織, 光安, 岳志, 緒方, 祐子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 25.10.2010
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate.35.186

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Summary:口蓋裂患者の中には,鼻咽腔閉鎖機能不全や構音器官の形態的異常は改善されているにもかかわらず,異常構音が改善されない症例が存在する。その原因のひとつに語音弁別能の関与が考えられている。語音弁別能とは音声を正確に聴き分ける能力である。語音弁別能は,他人の音声または録音された自分の音声を弁別する能力である外的語音弁別能と,自分自身が現在産生している音声を弁別する能力である内的語音弁別能にわけられる。本研究では異常構音を有する口蓋裂患者の外的語音弁別能と内的語音弁別能を評価し,口蓋裂患者の異常構音残存と語音弁別能との関連を検討した。 1.正常構音に対する外的語音弁別能と異常構音に対する内的語音弁別能の評価 異常構音を有する口蓋裂患者8例を対象に,正常構音に対する外的語音弁別能と患者自身の異常構音に対する内的語音弁別能を評価した。正常構音に対する正聴率は全例100%であり,正常構音に対する外的語音弁別能は良好であったが,患者自身が産生する異常構音に対する内的語音弁別能は不良であった。 2.異常構音に対する外的語音弁別能の評価 異常構音を有する口蓋裂患者8例を対象に,他人が産生する異常構音サンプルに対する語音弁別能と患者自身の異常構音を録音して聴いた場合の語音弁別能を評価した。なお,正常構音の口蓋裂患者8例,非口蓋裂患者3例を対照群とした。異常構音サンプルに対する弁別は,サンプル音が自分の異常構音と同じ異常構音か,異なる異常構音かで語音弁別能に差はなく,対照群との間にも差はなかった。しかし異常構音の種類によって語音弁別の難度に差を認め,声門破裂音は弁別が容易で,側音化構音は弁別が困難であった。また,患者自身の音声を録音して聴かせた場合の外的語音弁別能は低かった。 以上より,患者自身が産生する異常構音に対する語音弁別能が低いため自分の異常構音を自覚できず,異常構音の改善が困難であると考えられた。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate.35.186