ヒト関節拘縮病態の解剖学的観察,解析方法の検討 解剖学実習体による検討

【目的】臨床で遭遇する拘縮には,結合組織,骨格筋などの関節構成体や,皮膚,神経などが複雑に関与している。今回の報告では,膝関節に屈曲拘縮を呈したヒト解剖学実習体を用いて拘縮における形態学的変化を詳細に観察してその構成要素を検討した。またその方法の有用性についても検討した。【方法】膝関節に程度の異なる拘縮を呈した解剖学実習体および現病・既往に膝関節拘縮を呈さない解剖学実習体を3体ずつ用いて肉眼的観察を行った。関節包の形態および弾性線維を観察するためエラスチカ・ワンギーソン染色および弾性線維のコアタンパク質であるエラスチンに対する免疫組織化学による組織学的観察を行った。【結果】浅層や断面の肉眼観察...

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Published in理学療法学 Vol. 38; no. 3; pp. 173 - 179
Main Authors 井上, 隆之, 橋本, 龍樹, 岩本, 凡子, 大谷, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.06.2011
日本理学療法士協会
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.KJ00007296809

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Summary:【目的】臨床で遭遇する拘縮には,結合組織,骨格筋などの関節構成体や,皮膚,神経などが複雑に関与している。今回の報告では,膝関節に屈曲拘縮を呈したヒト解剖学実習体を用いて拘縮における形態学的変化を詳細に観察してその構成要素を検討した。またその方法の有用性についても検討した。【方法】膝関節に程度の異なる拘縮を呈した解剖学実習体および現病・既往に膝関節拘縮を呈さない解剖学実習体を3体ずつ用いて肉眼的観察を行った。関節包の形態および弾性線維を観察するためエラスチカ・ワンギーソン染色および弾性線維のコアタンパク質であるエラスチンに対する免疫組織化学による組織学的観察を行った。【結果】浅層や断面の肉眼観察では,拘縮による骨格筋の変位や膝窩部での骨格筋の巻き込みによる線維化が,膝屈曲角度が大きい拘縮症例ほどより明瞭に観察された。また関節包の弾性線維を組織学的に観察して対照群と比較すると,著明な弾性線維の減少,走行変化,位置変化などの複雑な要因が確認された。【結論】今回の観察方法により,拘縮の複雑な構成要素が検討できた。ヒト解剖実習体を用いた本研究は,ヒト拘縮病態の重症度別情報を収集するため有効であることが示唆された。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00007296809