膝歩きにおける快適速度を決定する因子の検討

【目的】 歩行中の力学的エネルギー保存効率の指標である%recovery(%R)は、快適とする速度において最大となるような上凸の二次曲線を描く。これは、エネルギー効率が最大となる速度を快適と規定していると考えられる。我々は先行研究において、膝歩きにも快適速度が存在し、そのケイデンスが快適歩行と近いことを示した。本研究は、通常歩行で見られるような%Rと歩行速度の関係性が、膝歩きにも存在するか明らかにし、膝歩きの快適速度の決定因子について検討することとした。 【方法】 対象は健常成人20名(23.5±1.4歳)であった。課題は、トレッドミル上での歩行および膝歩きとし、それぞれの快適速度を基準として...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 51
Main Authors 高橋, 典明, 倉山, 太一, 藤本, 修平, 田所, 祐介, 大高, 洋平, 小宅, 一彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_51

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Summary:【目的】 歩行中の力学的エネルギー保存効率の指標である%recovery(%R)は、快適とする速度において最大となるような上凸の二次曲線を描く。これは、エネルギー効率が最大となる速度を快適と規定していると考えられる。我々は先行研究において、膝歩きにも快適速度が存在し、そのケイデンスが快適歩行と近いことを示した。本研究は、通常歩行で見られるような%Rと歩行速度の関係性が、膝歩きにも存在するか明らかにし、膝歩きの快適速度の決定因子について検討することとした。 【方法】 対象は健常成人20名(23.5±1.4歳)であった。課題は、トレッドミル上での歩行および膝歩きとし、それぞれの快適速度を基準として0.5倍、0.75倍、1.0倍、1.25倍、1.5倍の速度でランダムに実施した。重心変位を第三腰椎棘突起上に貼付した光学マーカーから計測し、%Rおよびケイデンスを算出した。%Rとケイデンスについて課題様式(歩行・膝歩き)と速度(5段階)の間で2要因の反復測定分散分析を実施し、下位検定として膝歩きと歩行との間で対応のあるt検定を実施した。有意水準は5%とした。なお、本研究は当院倫理審査委員会の承認を受け参加者に説明と同意を得た上で行った。 【結果】 以下、0.5倍速~1.5倍速の順序で結果値を示す。%Rは、歩行:45.9±10.9、59.8±11.2、64.5±8.8、64.8±7.0、59.0±10.0、膝歩き:56.6±10.3、59.5±7.6、56.9±11.2、57.8±7.4、55.0±8.2であった。ケイデンスは、歩行:91.3±15.0、112.5±18.7、135.0±18.6、144.8±22.6、155.1±25.8、膝歩き:111.1±19.7、115.5±18.4、129.0±17.7、145.3±19.6、155.7±18.6であった。%R、ケイデンスとも課題様式と速度との間に有意な交互作用をみとめた(p<.001)。%Rは0.5倍速、1倍速、1.25倍速にて、ケイデンスは0.5倍速において課題間で有意差を認めた(p<.05)。 【考察】 歩行の%Rは先行研究に一致し速度と関連したパターンを示し、快適速度の1.25倍速で最大値を示した。一方、膝歩きの%Rは速度によって大きく変化せずほぼ一定値をとり、快適速度との関連が見られないことが明らかとなった。このことから膝歩きにおける快適速度の判断基準はエネルギー効率以外の要素が関連している可能性が示された。なお、今回歩行と膝歩きのケイデンスはほぼ等しく、有意差も認められなかったことから、膝歩きの快適速度は、快適歩行のケイデンスを参考に規定されている可能性がある。 【まとめ】 トレッドミル上にて膝歩きと歩行を実施し、速度と力学的エネルギーの関係を調べた。膝歩きでは速度変化に関係なく%Rはほぼ一定値を示し、快適速度と関連しないことが示された。
Bibliography:51
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_51