組織血流量からみる弾性ストッキングとAVインパルス併用効果の検証
〈緒言〉下肢静脈還流障害は、整形外科領域における下肢の手術後の安静による静脈還流の低下が大きな要因とされている。この下肢静脈血栓を起こし、肺血栓塞栓症の原因となり、重篤になる恐れもある。当病棟でも、手術後の下肢静脈血流障害予防のため、弾性ストッキングの着用を行ない、間欠的加圧装置(AVインパルス)を併用している。 AVインパルスの効果は、ある程度留まった血液を機械的に押し流すことによって、深部静脈血栓を予防するとされている。また、弾性ストッキングの効果は、下肢を圧迫し、静脈の総断面積を減少させることによって流速を増し、血栓をできにくくするとされている。それぞれの効果は明らかにされているが、実際...
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| Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 319 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
| DOI | 10.14879/nnigss.54.0.319.0 |
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| Summary: | 〈緒言〉下肢静脈還流障害は、整形外科領域における下肢の手術後の安静による静脈還流の低下が大きな要因とされている。この下肢静脈血栓を起こし、肺血栓塞栓症の原因となり、重篤になる恐れもある。当病棟でも、手術後の下肢静脈血流障害予防のため、弾性ストッキングの着用を行ない、間欠的加圧装置(AVインパルス)を併用している。 AVインパルスの効果は、ある程度留まった血液を機械的に押し流すことによって、深部静脈血栓を予防するとされている。また、弾性ストッキングの効果は、下肢を圧迫し、静脈の総断面積を減少させることによって流速を増し、血栓をできにくくするとされている。それぞれの効果は明らかにされているが、実際に併用しても下肢静脈血流障害予防に効果があるかということに着目し、私達は、現在行なっている弾性ストッキングとAVインパルスの併用の効果について、組織血流量をもとに検証を行なった。 〈方法〉期間は平成16年8月-平成17年1月。対象は、当病院スタッフ26名と内科疾患がなく測定下肢に病変がない入院患者4名の合計30名。条件設定は、組織血流量測定前3分間は、安静臥床。測定部位は、左第1趾の足底側。測定器は、レーザー組織血流計「オメガフローFLO-NT」を使用。 データの取り方は、データが流動的なため10秒ごとに3回測定し、平均値を算定する。 以上の条件設定のもと(1)安静臥床時の素足の組織血流量の測定(2)弾性ストッキング装着中の組織血流量の測定(3)弾性ストッキング装着中にAVインパルスを行ない1分間経過時の組織血流量の測定を行なった。分析方法は、(1)から(3)の組織血流量の平均値を算定し、t検定を行なった。 〈結果〉平均値からみると素足8.6(ml/min/100g)に対して組織血流量が最も増加したのは弾性ストッキングとAVインパルスの併用9.9(ml/min/100g)、次いで弾性ストッキングの9.7(ml/min/100g)であった。t検定の結果からは、素足と弾性スッとキング装着時ではp値0.02、素足と弾性ストッキングとAVインパルスの併用ではp値0.04でありそれぞれの方法の間に有意差(p<0.05)が認められた。 〈考察〉このレーザー血流計は表面下1mm程度の微小循環血流を測定したもので、毛細血管の血流量といえる。皮膚表面組織には表在静脈系の毛細血管が走行しており、深部静脈とは穿通枝を通じて連絡されている。そのため組織血流量が増加することにより、深部静脈へ流入する血流量も増加し、血栓予防に効果があるのではないかと考える。 〈まとめ〉今回の検証により弾性ストッキングとAVインパルスの併用は組織血流量を増加し、その有用性が実証された。 |
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| Bibliography: | 2N05 |
| ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
| DOI: | 10.14879/nnigss.54.0.319.0 |