両側顎関節の偽痛風が疑われた1例

顎関節に生じる偽痛風は比較的まれである。今回われわれは,両側顎関節の偽痛風を疑う1例を経験したので報告する。患者は64歳の男性で,胆管狭窄のため当院消化器内科に入院中に右側顎関節の腫脹と咬合時痛,さらに開口障害と両側臼歯部の咬合不全が生じ,当科を紹介された。初診時,右側顎関節部にびまん性でやや硬く軽度圧痛を伴う腫脹を認めたが,同部の皮膚に発赤はなかった。開口量は左側の上下中切歯間で26 mmであった。咬合接触は前歯部のみで両側臼歯部は2~3 mm離開していた。診断は,CTにて両側顎関節隙に不整形で流動性のある石灰化像を認め,偽痛風の疑いとした。なお,同時期に左側手首にも腫脹と疼痛を生じ,同様の...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 36; no. 3; pp. 112 - 119
Main Authors 齋藤, 太郎, 上野山, 敦士, 安島, 久雄, 池田, 順行, 西山, 秀昌, 大貫, 尚志, 髙木, 律男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.12.2024
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.36.112

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Summary:顎関節に生じる偽痛風は比較的まれである。今回われわれは,両側顎関節の偽痛風を疑う1例を経験したので報告する。患者は64歳の男性で,胆管狭窄のため当院消化器内科に入院中に右側顎関節の腫脹と咬合時痛,さらに開口障害と両側臼歯部の咬合不全が生じ,当科を紹介された。初診時,右側顎関節部にびまん性でやや硬く軽度圧痛を伴う腫脹を認めたが,同部の皮膚に発赤はなかった。開口量は左側の上下中切歯間で26 mmであった。咬合接触は前歯部のみで両側臼歯部は2~3 mm離開していた。診断は,CTにて両側顎関節隙に不整形で流動性のある石灰化像を認め,偽痛風の疑いとした。なお,同時期に左側手首にも腫脹と疼痛を生じ,同様の石灰化像を認め,当院整形外科にて左手関節偽痛風と診断されていた。治療は消炎鎮痛薬,ステロイドによる対症療法を行い,急性発作は軽快した。6か月後のCTにて,両側顎関節隙の石灰化像は減少し,以後顎関節部に症状の再燃はないが,今後も慎重な経過観察が必要と思われた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.36.112