僧帽弁置換術後、人工弁脱落による重症心不全を発症し、再置換術を行った一症例~ソーシャルサポートに重点を置いたリハビリテーションについて

【目的】 僧帽弁置換術(以下MVR)、三尖弁輪縫縮術(以下TAP)、Maze施行後、心内膜炎を合併し、置換後の僧帽弁脱落を認め、再置換術を施行。長期間の入院加療を必要としたが、身辺ADLを獲得し自宅復帰した症例の心臓リハビリテーション(以下リハ)の経過についてまとめた。 【症例紹介】 71歳、女性。入院時のUCGにてMr3/3、LVDd48.5mm、LVDs34.2mm、LVEF56.6%、胸部X線よりCTR56%、NTproBNP 784.7 pg/ml NYHA心機能分類Ⅱ度。長男夫婦、孫2人の5人暮らし。 患者には症例報告の内容説明し同意を得た。 【経過】 平成22年12月MVR、TAP...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 2
Main Authors 小須田, 恵美, 大見, 朋哲, 文沢, 靖
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_2

Cover

More Information
Summary:【目的】 僧帽弁置換術(以下MVR)、三尖弁輪縫縮術(以下TAP)、Maze施行後、心内膜炎を合併し、置換後の僧帽弁脱落を認め、再置換術を施行。長期間の入院加療を必要としたが、身辺ADLを獲得し自宅復帰した症例の心臓リハビリテーション(以下リハ)の経過についてまとめた。 【症例紹介】 71歳、女性。入院時のUCGにてMr3/3、LVDd48.5mm、LVDs34.2mm、LVEF56.6%、胸部X線よりCTR56%、NTproBNP 784.7 pg/ml NYHA心機能分類Ⅱ度。長男夫婦、孫2人の5人暮らし。 患者には症例報告の内容説明し同意を得た。 【経過】 平成22年12月MVR、TAP、Mazeの手術施行。術後10病日に心内膜炎を合併し、僧帽弁脱落を認め、急性心不全、間質性肺炎を併発。内科的加療を行うが約13週にわたりNYHA分類Ⅳ度を認め根治困難のため、132病日僧帽弁に対し再置換術を施行。再手術の術前評価では、Mr3/3、LVDd46.7mm、LVDs30.5mm、LVEF63.8%、心胸郭比CTR66%。再手術前リハは、離床、ROM練習中心に実施。術後5日よりリハ再開。重症心不全後に伴う廃用性筋萎縮を認め、離床開始時の下肢筋力MMT2、再手術後31病日の大腿四頭筋筋力はハンドヘルドダイナモメーターにて6.7kgf/kg。リハはBorg scale11~13を目安に運動負荷を設定し、筋力強化、ADL練習を術後合併症の評価を継続しつつ実施。一般病棟へ転棟後、動作手順の貼紙や記録用紙を作成し、家人も参加できるようなリハプログラムを実施した。家人が関わりを持ちながら、床上でのROM練習から段階的にADL練習へアップし、家人の誘導で離床、排泄介助が実施された。 【結果】 入院後より221病日(再手術後78病日)に自宅退院。退院時FIM100/126点、下肢筋力19.3kgf/kg。排泄はポータブルトイレ自立、入浴は家族介助にて可能となった。歩行は歩行器を使用し家族監視、連続歩行距離80m可能となり、自宅内の移動を獲得。退院後は週2回の訪問リハを利用し、毎日の自主練習を継続している。 【考察】 田村らは、ソーシャルサポートは、療養生活上の課題解決へのモチベーション保持する支援の役割を果たすと捉えている。僧帽弁脱落後、重症心不全の状態が長期化した中、家人を中心としたソーシャルサポートを重視し、術後早期より家人がリハに関わるプログラムを施行し、段階的にADL練習へ移行できたことで、患者自身が自宅復帰に向け自信を持つことが出来たと考えられた。また、患者と家族の自宅復帰の不安を解消し、自宅退院へ繋がったと考えられた。 【まとめ】 ソーシャルサポートは代表的なリハアプローチであるが、特に本症例のような重症心不全、長期入院例に対しては術後早期からのソーシャルサポート導入が、円滑的な自宅退院へ繋げられる可能性を示唆する。
Bibliography:2
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_2