当院における中腸回転異常症の成人発見例の検討

【はじめに】中腸回転異常は胎生期の腸回転不全により生じる先天異常である. 本症の発生頻度は約1万人に1人で, 約80%が生後1ヶ月以内に何らかの腸閉塞症状で発症する. 成人での発見は極めてまれと報告されている. 今回,当院における中腸回転異常症の成人発見例について検討したので報告する.【対象】2005年6月から2011年5月に当院で発見された成人中腸回転異常症の14症例を対象とした. 【結果】発見時の平均年齢は64.9歳,男女比は10:4であった.発見契機は健診や他の疾患の精査目的などのCTで偶然発見されるものが多かった. イレウス症状を来した症例は1例もなかった.回盲部領域の疾患の合併症例が...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 56
Main Authors 北村, 弘樹, 丸岡, 敬幸, 近藤, 英俊, 横内, 桂子, 細見, 直樹, 阿河, 直子, 小林, 伸也, 合田, 吉徳, 山下, 拓磨, 松岡, 裕士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2011
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.56.0

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Summary:【はじめに】中腸回転異常は胎生期の腸回転不全により生じる先天異常である. 本症の発生頻度は約1万人に1人で, 約80%が生後1ヶ月以内に何らかの腸閉塞症状で発症する. 成人での発見は極めてまれと報告されている. 今回,当院における中腸回転異常症の成人発見例について検討したので報告する.【対象】2005年6月から2011年5月に当院で発見された成人中腸回転異常症の14症例を対象とした. 【結果】発見時の平均年齢は64.9歳,男女比は10:4であった.発見契機は健診や他の疾患の精査目的などのCTで偶然発見されるものが多かった. イレウス症状を来した症例は1例もなかった.回盲部領域の疾患の合併症例が2例あり,初診時に診断に苦慮した.そのうち虫垂粘液嚢胞腺腫を合併した症例を呈示する.【症例】85歳, 男性.主訴:自覚症状.現病歴:健診目的の腹部超音波検査にて左下腹部に嚢胞性腫瘤を指摘され精査目的で入院となった. 腹部CTでは側腹部に嚢胞性の腫瘤を認めた.十二指腸水平脚は腹部大動脈と上腸間膜動脈との間には認められず, 小腸は右側に, 大腸は左側に偏在していた. 以上より中腸回転異常に伴う虫垂粘液嚢胞性疾患を疑った. 下部消化管内視鏡検査では左側腹部に回盲部が偏在していた. 回盲部には内腔に突出する虫垂が認められ, 虫垂粘液嚢胞腫瘍が疑われた. 確定診断及び治療目的で外科的手術を施行した. 病理組織所見では中等度から高度異型を伴う腺腫細胞を認めた. 嚢胞壁の一部には粘液の貯留がみられ, 虫垂粘液嚢胞腺腫と診断した.【考察】中腸回転異常症は非常に稀な疾患として報告をされており、成人発症例は200万~500万人に1人と言われる.しかし今回の検討結果からは,無症状例は少なからず存在しているものと思われた.中腸回転異常症を伴った症例では消化管,特に回盲部の位置異常により診断に難渋する症例も少なくないと考えられる. 成人かつ左下腹部の症状や病変であっても虫垂および盲腸に関連した疾患を念頭に置く必要があると考えられた.
Bibliography:RKS4-21
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.56.0