コレステロール結晶塞栓症による小腸穿孔・狭窄の1例

症例は91歳の女性で,心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置術後,短期間に腸閉塞を繰り返したため手術を施行したところ,コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による小腸穿孔・狭窄が原因であった1例を経験した.小腸CCEの本邦報告例20例を集計し,穿孔,壊死,狭窄に分類し検討した.壊死・狭窄症例はCCEに高頻度に合併する皮膚症状,腎機能障害の合併もなく小範囲の小腸部分切除術が施行され死亡例はなかった.一方,穿孔例はほぼ全例に皮膚症状,重度の腎機能障害を合併し,穿孔部位も多発かつ広範に及び,広範な小腸切除術が必要であった.術後の再穿孔...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 12; pp. 1243 - 1251
Main Authors 坂下, 克也, 雪本, 清隆, 阪本, 一次, 澤田, 隆吾, 須浪, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0030

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Summary:症例は91歳の女性で,心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置術後,短期間に腸閉塞を繰り返したため手術を施行したところ,コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による小腸穿孔・狭窄が原因であった1例を経験した.小腸CCEの本邦報告例20例を集計し,穿孔,壊死,狭窄に分類し検討した.壊死・狭窄症例はCCEに高頻度に合併する皮膚症状,腎機能障害の合併もなく小範囲の小腸部分切除術が施行され死亡例はなかった.一方,穿孔例はほぼ全例に皮膚症状,重度の腎機能障害を合併し,穿孔部位も多発かつ広範に及び,広範な小腸切除術が必要であった.術後の再穿孔,縫合不全も多く13例中12例が死亡していた.CCEが消化管穿孔や狭窄の原因となることは比較的まれであるが,高齢化に伴い今後増加することが予想され,本疾患を認識しておくことは重要であると思われる.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0030