当科開設後 40年間の口唇口蓋裂患者における顎矯正手術の臨床統計学的検討
鹿児島大学病院口腔顎顔面外科において, 1981年から 2020年にかけて顎矯正手術を受けた唇顎口蓋裂および口蓋裂患者(以下: CLP患者)91例を対象に臨床統計学的観察を行い, CLPを伴わない顎変形症患者(以下:非 CLP患者)410例と比較した。その結果は以下のとおりであった。 1. CLP患者の男女比は 1.1:1で性差はなく,平均年齢は 17.5歳であった。一方,非 CLP患者の男女比は 1:2.4で,平均年齢は 22.2歳であった。 2. CLP患者の臨床診断別症例数は,下顎前突症が 37例(40.7 %),上顎後退症と下顎前突症の併発が 31例(34.1 %),上顎後退症が...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 49; no. 3; pp. 209 - 217 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate.49.209 |
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Summary: | 鹿児島大学病院口腔顎顔面外科において, 1981年から 2020年にかけて顎矯正手術を受けた唇顎口蓋裂および口蓋裂患者(以下: CLP患者)91例を対象に臨床統計学的観察を行い, CLPを伴わない顎変形症患者(以下:非 CLP患者)410例と比較した。その結果は以下のとおりであった。 1. CLP患者の男女比は 1.1:1で性差はなく,平均年齢は 17.5歳であった。一方,非 CLP患者の男女比は 1:2.4で,平均年齢は 22.2歳であった。 2. CLP患者の臨床診断別症例数は,下顎前突症が 37例(40.7 %),上顎後退症と下顎前突症の併発が 31例(34.1 %),上顎後退症が 18例(19.8%)であった。一方,非 CLP患者では,下顎前突症単独が 361例(85.9 %),上顎後退症と下顎前突症の併発が 24例(5.9 %),上顎後退症単独が 9例(2.2 %)であった。CLP患者では,上顎後退症の割合が高かった。 3. CLP患者の術式別症例数は,下顎矢状分割術( Sagittal split ramus osteotomy,以下: SSRO)が 37例(40.7 %),Le Fort I型骨切り術+ SSROが 31例(34.1 %),Le Fort I型骨切り術が 16例(17.6 %)であった。一方,非 CLP患者では, SSROが 344例(83.9 %),Le Fort I型骨切り術+SSROが 34例(8.4 %),Le Fort I型骨切り術が 7例(1.7 %)であった。 CLP患者では,Le Fort I型骨切り術の割合が高かった。 4. CLP症例の平均手術時間は 5時間 28分,出血量は 383 gであった。非 CLP症例では,平均手術時間は 4時間 20分,出血量は 255 gであった。 CLP患者では非 CLP患者と比較して,手術時間が有意に長く出血量も多かった。特に上顎骨単独手術の出血量は 3.1倍多かった。以上より CLP患者の顎矯正手術は,非 CLP患者より手術時間が長く,侵襲が大きくなる可能性がある。このように CLP患者の顎矯正手術では,手術手技の研鑽と伝承がより重要と考えられる。 |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate.49.209 |