思春期の口唇裂・口蓋裂患者が手術への意思決定を行う際の親の経験

口唇裂・口蓋裂患者が乳幼児期の場合は,親が治療への意思決定を行っていることから,治療への意思決定の主体を患者の成長に合わせて親から患者に移行することに困難が伴う。本研究では,患者が治療への意思決定の主体となるための支援を検討するために,思春期の患者が手術への意思決定をする際の親の経験を明らかにすることを目的とした。 方法は,口唇外鼻修正術目的で入院した思春期の患者を育てる親12名(男性1名,女性11名)を対象に半構造化面接を行った。親の年齢は40〜60歳代であった。患者の年齢は15〜18歳で,性別は男性6名,女性6名であった。質的帰納的分析によりカテゴリー,コアカテゴリーを抽出した。 思春期の...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 164 - 174
Main Authors 池, 美保, 古郷, 幹彦, 藤原, 千惠子, 高野, 幸子, 熊谷, 由加里, 松中, 枝理子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 2019
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate.44.164

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Summary:口唇裂・口蓋裂患者が乳幼児期の場合は,親が治療への意思決定を行っていることから,治療への意思決定の主体を患者の成長に合わせて親から患者に移行することに困難が伴う。本研究では,患者が治療への意思決定の主体となるための支援を検討するために,思春期の患者が手術への意思決定をする際の親の経験を明らかにすることを目的とした。 方法は,口唇外鼻修正術目的で入院した思春期の患者を育てる親12名(男性1名,女性11名)を対象に半構造化面接を行った。親の年齢は40〜60歳代であった。患者の年齢は15〜18歳で,性別は男性6名,女性6名であった。質的帰納的分析によりカテゴリー,コアカテゴリーを抽出した。 思春期の患者が手術への意思決定を行う際の親の経験として,[親の心情][子どもの心情][親の関わり]の3つのコアカテゴリーを得た。[親の心情]では【手術後の不安】【捉えきれない子どもの本心】を含む7カテゴリーを抽出した。[子どもの心情]として【子どもの手術への不安や心配事】等の4カテゴリーを抽出した。[親の関わり]では【子どもの意向と親の意向の調整】【子どもの代弁者】を含む5カテゴリーを抽出した。 思春期の患者を育てる親は,手術への意思決定の主体を徐々に患者に移行しながら,親と患者の意向をすり合わせて,患者が手術に臨めるように関わっていることが示唆された。しかし,親は【手術後の不安】や【子どもの手術への不安や心配事】を感じていることから,親の不安を軽減するために更なる支援の充実を図る必要がある。また,親は【捉えきれない子どもの本心】を感じながらも,【子どもの意向と親の意向の調整】を行い,医療者に対して【子どもの代弁者】という役割を担っていた。治療に対する意向が親子で異なる場合,その後の親子関係に危機をもたらす可能性もあるため,医療者は手術への意思決定が親子間で十分に検討された結果であるのか確認する必要がある。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate.44.164