不正咬合患者群における顎関節病態と顎顔面形態の関連性

顎関節症,とりわけ変形性顎関節症(OA)による下顎骨の退行性病変と,顎顔面形態との関連性が示唆されている。しかしながら,顎関節病態とその自然経過は多様であるため,明確な結論が得られていない。本研究では,顎関節症を伴う不正咬合患者を対象として,顎関節病態と顎顔面形態との関連性を明らかにすることを目的とした。 1998年から2008年までの間に,不正咬合の改善を主訴として広島大学病院矯正歯科を受診し,顎関節症状(関節雑音,顎関節や咀嚼筋などの疼痛,開口障害ないし顎運動異常)を有していたためMRI検査を施行した患者373名を被験者とし,OAを片側に有する患者17名(UOA群),OAを両側に有する患者...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 22; no. 1; pp. 21 - 25
Main Authors 谷本, 幸太郎, 神谷, 貴志, 佐野, 良太, 杉山, 拓紀, 光吉, 智美, 小澤, 奏, 丹根, 由起, 丹根, 一夫, 大谷, 淳二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2010
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.22.21

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Summary:顎関節症,とりわけ変形性顎関節症(OA)による下顎骨の退行性病変と,顎顔面形態との関連性が示唆されている。しかしながら,顎関節病態とその自然経過は多様であるため,明確な結論が得られていない。本研究では,顎関節症を伴う不正咬合患者を対象として,顎関節病態と顎顔面形態との関連性を明らかにすることを目的とした。 1998年から2008年までの間に,不正咬合の改善を主訴として広島大学病院矯正歯科を受診し,顎関節症状(関節雑音,顎関節や咀嚼筋などの疼痛,開口障害ないし顎運動異常)を有していたためMRI検査を施行した患者373名を被験者とし,OAを片側に有する患者17名(UOA群),OAを両側に有する患者13名(BOA群),両側顎関節にOA所見や円板の転位が認められない患者31名(N群)に分類し,頭部X線規格写真を用いた顎顔面形態の検討を行った。 BOA群の∠ANB(p<0.01),∠SNB(p<0.01),SN/MP(p<0.01),PP/MP(p<0.05),Ar-Go(p<0.01)において,N群およびUOA群との間の有意差が示された。また,UOA群のすべての患者において患側への下顎骨の側方偏位が認められ,その偏位量はほかの群と比較して有意に大きかった。 以上の結果から,OAを両側に有する患者は下顎下縁平面が急傾斜で,下顎骨が後方位,下顎枝高が短小な骨格性Ⅱ級の顎顔面形態を示し,片側にOAを有する患者の下顎骨は患側へ偏位していることが明らかとなった。よって,OAと顎顔面形態との間に関連性があることが示唆された。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.22.21