股関節骨切術後の骨代謝マーカーの変動

骨折治癒での骨代謝マーカーの変動モデルとして, 股関節疾患に対する骨切術 (股関節臼蓋形成不全に対する寛骨臼回転骨切術, 特発性大腿骨頭壊死に対する大腿骨回転骨切術) の手術前後における骨代謝マーカーの変動を検討した.症例は寛骨臼回転骨切術: 8例, 大腿骨回転骨切術: 3例の計11例である.今回検討したのは, 血清カルシウム, 無機リン, アルカリ性ホスファターゼ (ALP) , 骨型ALPなど日常的に測定されている骨代謝マーカーに加えて, オステオカルシンとカルシトニンを測定し, 手術前から術後3, 7, 14, 21, 28日まで追跡した.血清カルシウムは, 術後3日目に術前値の90.3...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 241 - 247
Main Authors 三雲, 仁, 星野, 雄志, 高木, 康, 平泉, 裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.04.2000
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.60.241

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Summary:骨折治癒での骨代謝マーカーの変動モデルとして, 股関節疾患に対する骨切術 (股関節臼蓋形成不全に対する寛骨臼回転骨切術, 特発性大腿骨頭壊死に対する大腿骨回転骨切術) の手術前後における骨代謝マーカーの変動を検討した.症例は寛骨臼回転骨切術: 8例, 大腿骨回転骨切術: 3例の計11例である.今回検討したのは, 血清カルシウム, 無機リン, アルカリ性ホスファターゼ (ALP) , 骨型ALPなど日常的に測定されている骨代謝マーカーに加えて, オステオカルシンとカルシトニンを測定し, 手術前から術後3, 7, 14, 21, 28日まで追跡した.血清カルシウムは, 術後3日目に術前値の90.3±1.5% (平均値±標準誤差) と最低値になった後に漸増し, 14日目に100.1±2.0%と術前値に復する経過であった.一方, 無機リンは術後3日目に73.3±6.1%とカルシウムと比較して異常低値になった後漸増し, 14日目には109.3±5.5%となり, 21日目には115.1±4.5%とリバウンド的に術前値より高値となる経過であった.また, 骨型ALPは術後3日目に80.2±5.4%まで低下した後, 7日目より上昇し, 21日目には術前値の160.5±26.2%, 28日目には134.0±118.4%と上昇が認められ, 骨芽細胞の増殖は術後7日目頃からおこることが示唆された.特異的骨代謝マーカーであるオステオカルシンは術後3日目に術前値の60.6±6.2%にまで低下したものが14日日には100.9±9.0%と術前値に復した後漸増し, 21日目に108.2±10.7%, 28日目には131.0±12.2%と上昇が持続する経過であった.一方カルシトニンは, 術後3日目に1499.3±571.2%と著明に上昇した後漸減し, 14日目には317.2±93.8%, 21日目には282.8±107.2%, 28日目には264.4±94.5%と漸減する変動であった.骨切術による生体反応としては, 骨吸収を抑制し, 骨新生を促進することが必要であり, カルシトニンとオステオカルシンの変動はこれらを良く反映していることが確認できた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.60.241