上部消化管穿孔を疑う画像所見を呈した食道癌大動脈食道瘻に伴う急性胃拡張の1例

症例は73歳の男性で,胸部中部食道癌に対し陽子線による化学放射線療法を実施した.第97治療病日,悪心と全身倦怠感から前医を受診しCTにて上腹部に多量の腹腔内遊離ガスが疑われ,消化管穿孔の診断で当院搬送となった.胸部の造影CTを追加し大動脈食道瘻および上部消化管穿孔と診断した.緊急で大動脈ステントグラフト内挿術を行い循環動態安定を得たのち開腹手術を実施した.著明に拡張した胃壁を認めるも腹水は淡血性で消化管穿孔は否定的であり血腫に伴う急性胃拡張と診断した.胃壁を切開し血腫除去後,胃瘻を造設した.以後の治療は希望されず術後24日目に退院,退院後47日目に自宅で永眠した.本症例は原病による出血に続発し...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 57; no. 7; pp. 319 - 325
Main Authors 遠田, 譲, 伊藤, 良太, 関, 健太, 小林, 隆, 久保, 賢太郎, 森, 和彦, 川崎, 誠治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.07.2024
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2023.0060

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Summary:症例は73歳の男性で,胸部中部食道癌に対し陽子線による化学放射線療法を実施した.第97治療病日,悪心と全身倦怠感から前医を受診しCTにて上腹部に多量の腹腔内遊離ガスが疑われ,消化管穿孔の診断で当院搬送となった.胸部の造影CTを追加し大動脈食道瘻および上部消化管穿孔と診断した.緊急で大動脈ステントグラフト内挿術を行い循環動態安定を得たのち開腹手術を実施した.著明に拡張した胃壁を認めるも腹水は淡血性で消化管穿孔は否定的であり血腫に伴う急性胃拡張と診断した.胃壁を切開し血腫除去後,胃瘻を造設した.以後の治療は希望されず術後24日目に退院,退院後47日目に自宅で永眠した.本症例は原病による出血に続発した急性胃拡張が,胃壁の過伸展のため腹腔内遊離ガスと紛らわしいCT像を呈したが,血腫による急性胃拡張の既報はない.特徴的な画像とともに食道癌による大動脈食道瘻の治療,急性胃拡張について考察する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2023.0060