外傷性肝外門脈損傷に対して,大伏在静脈グラフトによる門脈再建により救命しえた1例

症例は62歳の男性で,乗用車とトラックとの間に体幹を挟まれ受傷し,ドクターヘリで当院へ搬送された.腹腔内出血による出血性ショックの診断で,受傷2時間後に緊急手術を行った.門脈が脾静脈分岐部末梢で上腸間膜静脈と完全に離断していたが,門脈の直接縫合再建は困難であったため,右大伏在静脈によるグラフト再建術を行った.再建後,小腸の色調不良を呈していたため,翌日2nd look operationを行い,腸管の色調改善と肝内・外の門脈血流を確認した.術後68日目に退院となった.外傷性肝外門脈損傷は非常にまれであり報告例も少なく,その死亡率は高いとされている.治療法には,縫合術,結紮術,グラフト置換術,門...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 3; pp. 254 - 261
Main Authors 後藤, 満一, 佐瀬, 善一郎, 鈴木, 剛, 渡部, 晶之, 佐藤, 哲, 花山, 寛之, 多田, 武志, 遠藤, 久仁, 大須賀, 文彦, 木村, 隆, 見城, 明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0073

Cover

More Information
Summary:症例は62歳の男性で,乗用車とトラックとの間に体幹を挟まれ受傷し,ドクターヘリで当院へ搬送された.腹腔内出血による出血性ショックの診断で,受傷2時間後に緊急手術を行った.門脈が脾静脈分岐部末梢で上腸間膜静脈と完全に離断していたが,門脈の直接縫合再建は困難であったため,右大伏在静脈によるグラフト再建術を行った.再建後,小腸の色調不良を呈していたため,翌日2nd look operationを行い,腸管の色調改善と肝内・外の門脈血流を確認した.術後68日目に退院となった.外傷性肝外門脈損傷は非常にまれであり報告例も少なく,その死亡率は高いとされている.治療法には,縫合術,結紮術,グラフト置換術,門脈-下大静脈シャント術が主に行われているが,本邦ではグラフト再建にて救命した報告はなかった.門脈損傷の直接縫合が不可能な場合でも循環動態が保たれていれば,グラフト再建も積極的に施行すべきと考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0073