術前化学療法により組織学的完全奏効が得られた十二指腸癌の1例

症例は66歳の男性で,下血,動悸を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸に2型病変を認め,十二指腸癌の診断で当科紹介となった.CTで12pリンパ節が下大静脈および門脈を圧排しており,治癒切除不能と判断した.通過障害も認めたため胃空腸バイパス術を施行し,その後化学療法としてS-1/CDDP療法を3コース行ったところ,原発巣,リンパ節とも著明に縮小し,バイパス術の4か月後に治癒切除目的で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断で切除標本,12pリンパ節ともに悪性所見を認めず,組織学的完全奏効(pathological complete response;以下,pCRと略記)と診断し...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 58; no. 2; pp. 86 - 94
Main Authors 小川, 匡市, 岩瀬, 亮太, 中瀬古, 裕一, 小峯, 多雅, 衛藤, 謙, 薄葉, 輝之, 佐々木, 晃隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.02.2025
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2023.0103

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Summary:症例は66歳の男性で,下血,動悸を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸に2型病変を認め,十二指腸癌の診断で当科紹介となった.CTで12pリンパ節が下大静脈および門脈を圧排しており,治癒切除不能と判断した.通過障害も認めたため胃空腸バイパス術を施行し,その後化学療法としてS-1/CDDP療法を3コース行ったところ,原発巣,リンパ節とも著明に縮小し,バイパス術の4か月後に治癒切除目的で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断で切除標本,12pリンパ節ともに悪性所見を認めず,組織学的完全奏効(pathological complete response;以下,pCRと略記)と診断した.本症例は術前化学療法が奏効しただけでなく,pCRを得たことから,リンパ節転移を伴う進行十二指腸癌に対しS-1/CDDP療法は有用な術前療法である可能性が示唆された.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2023.0103