多発小腸穿孔を来した多発血管炎性肉芽腫症の1例

症例は45歳の男性で,多発血管炎性肉芽腫症に対して当院アレルギー・リウマチ科で薬剤療法を開始した.開始後12日目に下腹部痛が出現し,腹部CTにて消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した.小腸間膜対側に10 mm以下の発赤を20か所認め,うち2か所の穿孔部を含む3か所を部分切除した.術後経過は良好で,9日目に薬剤療法を再開した小腸穿孔部の病理組織学的検査所見では,血管壁への炎症細胞の浸潤を認め,多発血管炎性肉芽腫症に伴う消化管穿孔と診断した.術後53日目に絞扼性イレウスが疑われ緊急手術を施行したが,明らかな絞扼性イレウスや穿孔の所見は認めなかった.その後の経過は良好で,薬剤療法を再開,継続中である....

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 53; no. 1; pp. 22 - 29
Main Authors 齋藤, 晶, 鯉沼, 広治, 田原, 真紀子, 天野, 雄介, 森, 和亮, 堀江, 久永, 宮永, 明子, 井上, 賢之, 佐田, 尚宏, 秋山, 陽一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.01.2020
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2018.0067

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Summary:症例は45歳の男性で,多発血管炎性肉芽腫症に対して当院アレルギー・リウマチ科で薬剤療法を開始した.開始後12日目に下腹部痛が出現し,腹部CTにて消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した.小腸間膜対側に10 mm以下の発赤を20か所認め,うち2か所の穿孔部を含む3か所を部分切除した.術後経過は良好で,9日目に薬剤療法を再開した小腸穿孔部の病理組織学的検査所見では,血管壁への炎症細胞の浸潤を認め,多発血管炎性肉芽腫症に伴う消化管穿孔と診断した.術後53日目に絞扼性イレウスが疑われ緊急手術を施行したが,明らかな絞扼性イレウスや穿孔の所見は認めなかった.その後の経過は良好で,薬剤療法を再開,継続中である.今回の検討から多発血管炎性肉芽腫症に伴う消化管穿孔は重症化しやすく,潰瘍性病変が多発する傾向にあり,ときに再穿孔を来すことがわかった.これらを十分理解し,患者・家族へ説明し,治療にあたることが必要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2018.0067