内視鏡的穿孔部閉鎖と胸腔縦隔ドレナージで救命しえた箸の誤飲による食道穿孔の1例

今回,我々は保存的治療が可能であった膿胸・縦隔膿瘍を伴う食道穿孔を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,認知症とてんかんで近医精神科に入院中に箸を誤飲した.箸は用手的に抜去され,出血やバイタルサインの変化がなく経過観察されていたが,翌日に発熱と呼吸苦が出現した.胸部単純X線検査上,左肺の完全虚脱を認め当院に紹介された.胸腔ドレーンを挿入したところ多量の消化液様胸水を認め,CT上も気胸,膿胸,縦隔膿瘍を認めたため食道穿孔を疑い,穿孔部確認のために上部消化管内視鏡検査を施行した.門歯から18 cmの食道に約2 mmの穿孔を認め,内視鏡的クリッピングで閉鎖した.その後CTガイド下に縦隔ドレーン...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 3; pp. 177 - 189
Main Authors 上泉, 洋, 大平, 将史, 横山, 良司, 辻, 健志, 加藤, 寛士, 市川, 伸樹, 伊藤, 浩二, 中島, 保明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0005

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Summary:今回,我々は保存的治療が可能であった膿胸・縦隔膿瘍を伴う食道穿孔を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,認知症とてんかんで近医精神科に入院中に箸を誤飲した.箸は用手的に抜去され,出血やバイタルサインの変化がなく経過観察されていたが,翌日に発熱と呼吸苦が出現した.胸部単純X線検査上,左肺の完全虚脱を認め当院に紹介された.胸腔ドレーンを挿入したところ多量の消化液様胸水を認め,CT上も気胸,膿胸,縦隔膿瘍を認めたため食道穿孔を疑い,穿孔部確認のために上部消化管内視鏡検査を施行した.門歯から18 cmの食道に約2 mmの穿孔を認め,内視鏡的クリッピングで閉鎖した.その後CTガイド下に縦隔ドレーンを留置し,ドレナージと抗菌薬で保存的治療を継続した.次第に状態の改善を認め,第15病日の食道造影検査で食道外への漏出を認めず,第19病日から食事を開始し,第50病日で外科的治療を要することなく退院となった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0005