がん患者さんの心臓血管を守る 腫瘍循環器外来の取り組み

近年,がんの治療法が格段に進歩し,がん患者の予後が改善している.がん治療を継続することができれば長期生存を見込めることも多く,がん治療を中断せず続けるためにがん支持療法の重要性が増している.がん支持療法は,消化器症状や骨髄抑制に対する対策や疼痛緩和ケアなど,従来から行われている対策もあるが,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新規薬剤による新たな合併症に対する対策も必要となっている.がん治療だけでなく,がん支持療法が充実していることが,がん診療連携拠点病院に必要とされている.がん支持療法の一つとして腫瘍循環器外来を開設した. 化学療法に伴う循環器合併症として,アントラサイクリン系薬剤に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in天理医学紀要 Vol. 23; no. 2; pp. 113 - 119
Main Author 坂本, 二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所 25.12.2020
天理よろづ相談所医学研究所
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1344-1817
2187-2244
DOI10.12936/tenrikiyo.23-013

Cover

More Information
Summary:近年,がんの治療法が格段に進歩し,がん患者の予後が改善している.がん治療を継続することができれば長期生存を見込めることも多く,がん治療を中断せず続けるためにがん支持療法の重要性が増している.がん支持療法は,消化器症状や骨髄抑制に対する対策や疼痛緩和ケアなど,従来から行われている対策もあるが,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新規薬剤による新たな合併症に対する対策も必要となっている.がん治療だけでなく,がん支持療法が充実していることが,がん診療連携拠点病院に必要とされている.がん支持療法の一つとして腫瘍循環器外来を開設した. 化学療法に伴う循環器合併症として,アントラサイクリン系薬剤による心毒性は有名だが,それ以外にも新規薬剤は近年急増し,心毒性や血栓症,高血圧を引き起こす可能性のある薬剤もあり,早期検出,治療が重要である.また,がん治療が終了したがんサバイバーが長期的には循環器疾患を発症するリスクがあると報告されている.がん治療の経過の中で発症する循環器合併症の対策を行うのが腫瘍循環器外来で,全国的に開設する施設が増えている.がん治療の内容やがんの状態をよく理解することが必要であり、腫瘍関連科との情報共有が重要である.今回は,腫瘍循環器外来の概要と, 腫瘍循環器学領域において注目されている, がん治療関連心機能障害とがん関連静脈血栓塞栓症について述べる.
ISSN:1344-1817
2187-2244
DOI:10.12936/tenrikiyo.23-013