産後一ヶ月における骨盤周囲の固定による腰背部痛に対する効果
(緒言) 女性は,妊娠や出産によって様々なマイナートラブルが出現しやすく,その一つに腰背部痛がある.腰背部痛は,妊娠初期から妊娠経過と共に増え妊娠後期には80%を超えると報告されている1).また,産褥1ヶ月を経過しても40%以上の褥婦に腰背部痛や骨盤周辺の痛みが残存したと報告している2).産褥期の腰背部痛に対する対処法には,固定帯の使用による骨盤周囲の固定がある.現在,病院や助産院で固定帯を使用して支援されており,その効果は経験的に認められている.しかし,その効果を科学的に実証する研究が行われているとは言い難く,十分に実証されていない. 本研究の目的は,産後一ヶ月以内の腰背部痛に対して骨盤周囲...
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Published in | The Bulletin of Chiba Prefectural University of Health Sciences Vol. 12; no. 1; p. 1_119 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
千葉県立保健医療大学
31.03.2021
Chiba Prefectural University of Health Sciences |
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ISSN | 1884-9326 2433-5533 |
DOI | 10.24624/cpu.12.1_1_119 |
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Summary: | (緒言) 女性は,妊娠や出産によって様々なマイナートラブルが出現しやすく,その一つに腰背部痛がある.腰背部痛は,妊娠初期から妊娠経過と共に増え妊娠後期には80%を超えると報告されている1).また,産褥1ヶ月を経過しても40%以上の褥婦に腰背部痛や骨盤周辺の痛みが残存したと報告している2).産褥期の腰背部痛に対する対処法には,固定帯の使用による骨盤周囲の固定がある.現在,病院や助産院で固定帯を使用して支援されており,その効果は経験的に認められている.しかし,その効果を科学的に実証する研究が行われているとは言い難く,十分に実証されていない. 本研究の目的は,産後一ヶ月以内の腰背部痛に対して骨盤周囲に固定帯を使用したケアの効果を褥婦がどのように実感しているのかを調査し,実践知を集積することであった.(研究方法)1.研究対象者 腰背部痛に対して分娩後から産褥一ヵ月において固定帯を使用していた褥婦を対象とした.2.調査期間 2020年1月~3月に実施した.3.調査方法 インタビューガイドに沿って1名につき30分程度の半構造的面接調査を実施した.研究対象者の許可を得て,ICレコーダーを使用して語りの内容を録音した.面接調査によって収集した全てのデータを逐語録にした.得られたデータから,産後一ヶ月以内の腰背部痛に対して骨盤周囲に固定帯を使用したケアの効果を抽出し,要約して分類した.(結果)1.調査対象者の属性 研究対象者は腰背部痛に対して分娩後から産褥一ヵ月において固定帯を使用していた褥婦11名であった.研究対象者が使用していた固定帯の種類は,骨盤ベルトを使用した者が8名,さらしを使用した者が3名であった.2.骨盤周囲に固定帯を使用したケアの効果 産後一ヶ月以内の腰背部痛に対して骨盤周囲に固定帯を使用したケアの効果について,73のコード数が抽出された.【はずすと腰が痛い】【腰が固定され安定している】【腰への負担が少ない】【痛みが軽減する】【動きやすい】【安心感がある】等のカテゴリーに集約された.また,【効果が分からない】というコードも抽出された.(考察) 今回の研究では,固定帯を使用することは腰が固定されて安定し負担が少ないことや,痛みの軽減が図られていたと考える.一方で,効果が分からないという語りの背景には,腰背部痛の発症を懸念して自ら予防的に装着していると考えられた.また,装着することで安心感を抱き,腰背部痛を悪化させないために,継続的に固定帯を使用しているものと推測された.(倫理規定) 本研究は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2019-27). 研究対象者には,文書と口頭で研究の目的,方法,守秘義務,研究参加は対象者の自由意思であること,途中辞退の権利について説明し同意書によって同意を得て実施した.(利益相反) 本研究の内容に関連して申告すべきCOI状態はない. |
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ISSN: | 1884-9326 2433-5533 |
DOI: | 10.24624/cpu.12.1_1_119 |