脳血管障害後遺症に伴う嚥下障害について
嚥下障害は高齢者においてしばしばみられ, 重篤な疾患を招く要因とも言われている.なかでも, 老人性肺炎は上気道感染と誤嚥が直接関係する2大背景因子とみなされている.また, 高齢者においては脳血管障害 (以下CVAと略す) 後遺症を有する者も多く, これらの老人に麻痺性嚥下障害が頻度的にも多く認められるとの報告もなされている.そこで我々は老年者の肺炎に対する口腔機能や口腔衛生状態とのかかわりを知る目的で, 特別養護老人ホームに入所し, CVA後遺症を有する老人50名に対し, 一般健康状態を調査し, 口腔領域における理学的所見および口腔衛生状態について観察を行った.その結果, CVA後遺症を有する...
Saved in:
Published in | 老年歯科医学 Vol. 9; no. 2; pp. 66 - 72 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年歯科医学会
30.11.1994
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0914-3866 1884-7323 |
DOI | 10.11259/jsg1987.9.66 |
Cover
Summary: | 嚥下障害は高齢者においてしばしばみられ, 重篤な疾患を招く要因とも言われている.なかでも, 老人性肺炎は上気道感染と誤嚥が直接関係する2大背景因子とみなされている.また, 高齢者においては脳血管障害 (以下CVAと略す) 後遺症を有する者も多く, これらの老人に麻痺性嚥下障害が頻度的にも多く認められるとの報告もなされている.そこで我々は老年者の肺炎に対する口腔機能や口腔衛生状態とのかかわりを知る目的で, 特別養護老人ホームに入所し, CVA後遺症を有する老人50名に対し, 一般健康状態を調査し, 口腔領域における理学的所見および口腔衛生状態について観察を行った.その結果, CVA後遺症を有する患者では過去に原因不明の持続性発熱が多く認められた.また, 嚥下障害, 口唇, 舌運動障害そして不正咬合などの理学的所見の異常がCVA後遺症群で高率に認あられた.さらにCVA後遺症を有する者の口腔内細菌検査では, 好中球や白血球の存在が著明であった.したがってCVA後遺症を伴う老人においては, 嚥下障害に加え, 口腔衛生状態の低下も呼吸性の発熱を起こす要因であることが示唆された. |
---|---|
ISSN: | 0914-3866 1884-7323 |
DOI: | 10.11259/jsg1987.9.66 |