鍼灸治療中に一過性脳虚血発作を認めた一症例 医療連携における鍼灸師の役割と心構えについて

【緒言】鍼灸施術中及び施術前後に観察された症状について、 症状が反復することから医師に診察を依頼したところ、 左中大脳動脈狭窄に伴う一過性脳虚血発作と診断され、 内服治療により新規脳梗塞の発症に至らずに事なきを得た症例を経験した。 早期発見における医療連携の重要性と、 連携における鍼灸師の役割と心構えについて考察する。 【症例】70歳代、 男性。 主訴は両肩痛。 X-1年7月、 自宅で転倒し、 左半身を強打した。 意識消失はないが、 左半身の痛みがあり、 同日総合病院の救急を受診した。 レントゲン所見に異常はなかった。 両肩痛が残存したため、 X年2月当院整形外科を受診、 両肩関節周囲炎と診断...

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Published in全日本鍼灸学会雑誌 Vol. 72; no. 4; pp. 255 - 260
Main Authors 石山, すみれ, 成島, 朋美, 鮎澤, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 全日本鍼灸学会 01.11.2022
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ISSN0285-9955
1882-661X
DOI10.3777/jjsam.72.255

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Summary:【緒言】鍼灸施術中及び施術前後に観察された症状について、 症状が反復することから医師に診察を依頼したところ、 左中大脳動脈狭窄に伴う一過性脳虚血発作と診断され、 内服治療により新規脳梗塞の発症に至らずに事なきを得た症例を経験した。 早期発見における医療連携の重要性と、 連携における鍼灸師の役割と心構えについて考察する。 【症例】70歳代、 男性。 主訴は両肩痛。 X-1年7月、 自宅で転倒し、 左半身を強打した。 意識消失はないが、 左半身の痛みがあり、 同日総合病院の救急を受診した。 レントゲン所見に異常はなかった。 両肩痛が残存したため、 X年2月当院整形外科を受診、 両肩関節周囲炎と診断され、 鍼治療開始となった。 【経過】鍼治療は肩と肩に50Hz、 15分の低周波鍼通電療法、 回旋腱板周囲筋に対し緊張緩和を目的に週一回実施した。 初診時から3診目までで、 ①一過性に言葉が出にくくなる、 ②辻褄の合わない会話がある、 ③物がみつからない、 などの症状が認められ、 施術者から当院脳神経外科の受診を勧めた。 鍼灸開始から21日目に頭部magnetic resonance imaging、 magnetic resonance angiographyが撮影され、 左傍側脳室領域の陳旧性脳梗塞および左中大脳動脈水平部の狭窄が認められた。 single photon emission computed tomographyでは左中大脳動脈領域の血流低下を認めた。 アスピリンの内服が開始され、 その後症状の発現は認められていない。 【考察】術者が観察した症状は一過性脳虚血発作による失語症と考えられた。 長時間患者と接している鍼灸師は患者の状態の変化に気がつく場面も多いと考えられ、 医療連携の中での治療において一定の役割をもつと思われた。 また、 良好な医療連携に加えて、 鍼灸師自らが疾患に関する知識を有していることも大切である。
ISSN:0285-9955
1882-661X
DOI:10.3777/jjsam.72.255