牛舎からのアンモニア揮散が近傍のヒノキ樹木への窒素沈着に及ぼす影響

牛舎などの畜舎から揮散した大気アンモニア (NH3) の乾性沈着は、流域への窒素負荷経路の一つとして重要である。農業や畜産業が盛んな茨城県では、畜舎近傍に林立する樹木へのアンモニウム態窒素 (NH4+-N) の沈着量が、畜舎から揮散したNH3の乾性沈着の影響を受けて増大すると考えられるが、その推計はなされていない。本研究では、畜産由来のNH3の近傍樹木への乾性沈着量を評価するために、茨城大学の保有する牛舎内部とその周辺でパッシブ法を用いたNH3濃度の多地点観測と、バルクサンプラーを用いた湿性沈着量およびヒノキへの樹冠通過雨沈着量の通年観測を行った。牛舎内のNH3濃度の年平均値はウシの飼養頭数密...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in大気環境学会誌 Vol. 54; no. 2; pp. 43 - 54
Main Authors 黒田, 久雄, 久保田, 智大, 福島, 慶太郎, 堅田, 元喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.03.2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.54.43

Cover

More Information
Summary:牛舎などの畜舎から揮散した大気アンモニア (NH3) の乾性沈着は、流域への窒素負荷経路の一つとして重要である。農業や畜産業が盛んな茨城県では、畜舎近傍に林立する樹木へのアンモニウム態窒素 (NH4+-N) の沈着量が、畜舎から揮散したNH3の乾性沈着の影響を受けて増大すると考えられるが、その推計はなされていない。本研究では、畜産由来のNH3の近傍樹木への乾性沈着量を評価するために、茨城大学の保有する牛舎内部とその周辺でパッシブ法を用いたNH3濃度の多地点観測と、バルクサンプラーを用いた湿性沈着量およびヒノキへの樹冠通過雨沈着量の通年観測を行った。牛舎内のNH3濃度の年平均値はウシの飼養頭数密度から推定される値よりも小さく、その原因を明らかにするためには畜舎内の環境と管理状況のモニタリングが必要であると考えられた。牛舎から揮散したNH3濃度の空間分布は、風による輸送に加えて樹木や建物群による減衰の影響や、気温、大気湿度などに影響を受ける可能性が示唆された。年間のNH4+-Nの樹冠通過雨沈着量の観測値(27.5 kgN/ha/yr)は、国内の遠隔地の森林での観測値を大きく上回り、牛舎から揮散したNH3の乾性沈着の影響が示唆された。NH3濃度とNH4+-Nの湿性・樹冠通過雨沈着量の観測結果から推計したNH3の沈着速度は3.4±2.5 cm/sとなり、茨城県の草地での推計値よりも大きく、既往の針葉樹林での文献値の最大値に近かった。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.54.43