発育期ラットの心臓機能に対する遊泳負荷の効果

長期間の運動負荷は心機能の変化を誘起し, 心臓全体から細胞下レベルに至るまでその効果が及ぶといわれているが, その機序は明らかでない.心肥大と心拍数低下が長期間運動負荷の効果として現われることが報告されているが, トレーニングによる心臓組織のカテコールアミン含有量変化については不明な点が多い. 本実験では長期間軽度の遊泳負荷を用いて, 軽度の運動負荷が発育期ラットの心臓機能に及ぼす影響を検討した.パラメーターとしては体重, 心重量, 軽度麻酔下心拍数, R-R間隔の変動, 心臓のカテコールアミン含有量を測定した. 1) ウイスター系ラットを2群に分け3週令より飼育した.1群のラットはケージ内で...

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Published in体力科学 Vol. 34; no. Supplement; pp. 113 - 120
Main Authors 小林, 啓三, 栗原, 敏, 岩本, 武夫, 入山, 啓治, 川村, 武, 松根, 洋右, 小西, 真人, 富沢, 直子, 吉浦, 昌彦
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人日本体力医学会 1985
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ISSN0039-906X
1881-4751
DOI10.7600/jspfsm1949.34.113

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Summary:長期間の運動負荷は心機能の変化を誘起し, 心臓全体から細胞下レベルに至るまでその効果が及ぶといわれているが, その機序は明らかでない.心肥大と心拍数低下が長期間運動負荷の効果として現われることが報告されているが, トレーニングによる心臓組織のカテコールアミン含有量変化については不明な点が多い. 本実験では長期間軽度の遊泳負荷を用いて, 軽度の運動負荷が発育期ラットの心臓機能に及ぼす影響を検討した.パラメーターとしては体重, 心重量, 軽度麻酔下心拍数, R-R間隔の変動, 心臓のカテコールアミン含有量を測定した. 1) ウイスター系ラットを2群に分け3週令より飼育した.1群のラットはケージ内で安静状態で飼育し, もう1群のラットは30℃温水中で自由遊泳させた.遊泳プログラムは10分間から開始し, 最大30分まで延長した.遊泳は1週5回行い, 最高14週間続行した. 2) 遊泳負荷群の体重は対照群よりも有意に低く体重に対する心重量比は遊泳負荷群の方が, 対照群よりも有意に大であった. 3) 遊泳負荷群ラットの, 心電図のR-R間隔は対照群よりも有意に延長しており, R-R間隔の変動の増加傾向が認められた. 4) 10週令, 17週令で両群のラット心室筋組織内カテコールアミンを定量した.1回, 30分間遊泳を行うと, ドーパミン含有量の増加が誘起されたが, 10週令の遊泳負荷群を除いて, ノルエピネフリン含有量に変化は見られなかった.しかしながら, 10週令, 17週令における両群のラットで, 安静状態におけるカテコールアミン含有量に有意な変化は生じなかった. 5) 以上の結果は次の様に解釈できる.1回30分間の遊泳は心臓を支配している自律神経活動と交感神経終末のカテコールアミン代謝に影響を及ぼす.長期間の遊泳は, カテコールアミン含有量の恒常的変化を誘起せず, 遊泳負荷群の低心拍数は交感神経活動の低下だけでは説明できない.
ISSN:0039-906X
1881-4751
DOI:10.7600/jspfsm1949.34.113