地域における初回脳卒中発症者に関する研究 保健師の家庭訪問に基づいた全数把握

目的 本研究は,脳卒中を発症したすべての個人・家族が地域における生活を再構築するための支援,とくに軽症の脳卒中発症者やリハビリによる自立生活再獲得者への支援について検討する基礎データとして,地域における脳卒中発症者を悉皆的に把握し,脳卒中登録の情報源,病型別脳卒中発症率,医療機関退院時の自立度と介護状況について明らかにし,保健師の役割について検討することを目的とした。 方法 1983年から1996年に島根県宍道町で,脳卒中を発症したと疑われる669件の情報について,保健師が家庭訪問等を行い脳卒中の初回発症を確認した323人を分析対象とした。脳卒中の定義は沖中らの厚生省研究班のものに準じた。寝た...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 49; no. 10; pp. 1076 - 1086
Main Author 小笹, 美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2002
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.49.10_1076

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Summary:目的 本研究は,脳卒中を発症したすべての個人・家族が地域における生活を再構築するための支援,とくに軽症の脳卒中発症者やリハビリによる自立生活再獲得者への支援について検討する基礎データとして,地域における脳卒中発症者を悉皆的に把握し,脳卒中登録の情報源,病型別脳卒中発症率,医療機関退院時の自立度と介護状況について明らかにし,保健師の役割について検討することを目的とした。 方法 1983年から1996年に島根県宍道町で,脳卒中を発症したと疑われる669件の情報について,保健師が家庭訪問等を行い脳卒中の初回発症を確認した323人を分析対象とした。脳卒中の定義は沖中らの厚生省研究班のものに準じた。寝たきり度,介護状況は退院時もしくは急性期経過後の状態によって分類した。 結果 1) 1983年-1996年に323人の初回脳卒中発症登録が行われ,登録の情報源は医療機関からの情報8.7%,保健師活動14.6%,死亡届26.0%,レセプト48.8%,不明1.9%であった。  2) 宍道町の40歳以上人口千対発症率は,男性5.3,女性3.5,病型別では,脳出血0.9,脳梗塞3.1,クモ膜下出血0.3であった。平均発症年齢は72.1歳,50%生存期間は71月であった。  3) 寝たきり度が把握できた166人の医療機関退院時の障害老人日常生活自立度は,自立64.5%,準寝たきり9.0%,寝たきり26.5%であった。  4) 介護状況が把握できた160人の医療機関退院後および急性期経過後の介護状況は,介護不要56.9%,介護が必要43.1%であった。介護必要者のうち,家族による介護は69.6%,入所・入院は30.4%であった。家族による介護のうち配偶者は58.3%,子供・孫は10.4%,嫁は31.3%であった。 結論 保健師が長期間継続して脳卒中登録に関わり,医療機関からの情報のみでなく死亡届やレセプトによる情報を家庭訪問により確認することで,地域の脳卒中発症を悉皆的に把握できることが明らかになった。また,脳卒中発症後自立生活を行っている軽症の発症者の再発予防に対する10年以上の長期にわたる健康管理支援が保健師に求められていることが示唆された。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.49.10_1076