周術期管理に難渋した乳児巨大後腹膜奇形腫の1例

症例は2カ月の女児で,腹満を主訴に入院した.入院時には,腹満に起因する嘔吐と経口摂取不良から誤嚥性肺炎と低栄養,貧血を合併していた.腹部CT, MRI検査から嚢胞成分,石灰化,脂肪組織の混入などを認める腫瘤と判明し,後腹膜原発の奇形腫と診断された.肺炎の治療,輸血,経鼻胃管からのミルク持続注入による栄養補給,等を行い全身状態の改善を速やかに得て根治手術を行った.手術時も,開腹までは十分な換気が得られず麻酔の維持に難渋したが,開腹により急激な換気の改善が得られ手術は無事に終了した.術式は腫瘍全摘を行い,摘出標本は病理検索の結果未熟奇形腫であった.乳児後腹膜奇形腫は巨大な腫瘤として診断されることが...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 11; pp. 2935 - 2939
Main Authors 北堀, 和男, 橋都, 浩平, 金森, 豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.11.1998
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.59.2935

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Summary:症例は2カ月の女児で,腹満を主訴に入院した.入院時には,腹満に起因する嘔吐と経口摂取不良から誤嚥性肺炎と低栄養,貧血を合併していた.腹部CT, MRI検査から嚢胞成分,石灰化,脂肪組織の混入などを認める腫瘤と判明し,後腹膜原発の奇形腫と診断された.肺炎の治療,輸血,経鼻胃管からのミルク持続注入による栄養補給,等を行い全身状態の改善を速やかに得て根治手術を行った.手術時も,開腹までは十分な換気が得られず麻酔の維持に難渋したが,開腹により急激な換気の改善が得られ手術は無事に終了した.術式は腫瘍全摘を行い,摘出標本は病理検索の結果未熟奇形腫であった.乳児後腹膜奇形腫は巨大な腫瘤として診断されることが多く腹満に起因する様々な合併症を起こして全身状態が不良のことが多い.そのため,可及的速やかに全身状態の改善を図り手術治療を行うべきで,手術中も呼吸状態が不安定で麻酔管理に十分な注意が必要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.2935