Meckel憩室炎を合併した成人腸回転異常症の1例

症例は28歳,女性.発熱と右下腹部の疼痛を主訴に腹膜炎の診断で入院となる.虫垂炎を合併した腸回転異常症の診断で手術を行った.虫垂は正常であったが,回腸末端部より約20cm口側に膿瘍を伴うMeckel憩室炎を認め切除した. Meckel憩室は, 10×4×4cmと大きく,頂部に著しい壁の肥厚と膿瘍を伴い,組織学的には強い炎症所見とともに,異所性の胃幽門腺粘膜と膵組織を認めた.自験例の腸回転異常症は,小腸が腹腔内の右側に,結腸が左側に偏在するのが特徴であるnonrotation typeであった.胎生期において, Meckel憩室は卵黄管の退化過程の異常により,腸回転異常症は腸管が発育していく様々...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 63; no. 10; pp. 2471 - 2475
Main Authors 黒阪, 慶幸, 新村, 康二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.10.2002
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.63.2471

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Summary:症例は28歳,女性.発熱と右下腹部の疼痛を主訴に腹膜炎の診断で入院となる.虫垂炎を合併した腸回転異常症の診断で手術を行った.虫垂は正常であったが,回腸末端部より約20cm口側に膿瘍を伴うMeckel憩室炎を認め切除した. Meckel憩室は, 10×4×4cmと大きく,頂部に著しい壁の肥厚と膿瘍を伴い,組織学的には強い炎症所見とともに,異所性の胃幽門腺粘膜と膵組織を認めた.自験例の腸回転異常症は,小腸が腹腔内の右側に,結腸が左側に偏在するのが特徴であるnonrotation typeであった.胎生期において, Meckel憩室は卵黄管の退化過程の異常により,腸回転異常症は腸管が発育していく様々な段階で阻止されるために発生する.この二つの先天性疾患は,成人では偶然に発見されることが多く,無症状の場合はその診断に苦慮する. 今回われわれは, Meckel憩室炎と成人腸回転異常症を合併した稀な1成人例を経験したので,文献的考察を加え報告した.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.63.2471