橋グリオーマ5症例にみられた聴性誘発反応所見

下部脳幹を含む橋グリオーマ5症例の蝸電図, ABR, MLR, SVRなど聴性誘発反応を検討した。その結果から橋グリオーマにみられる聴性誘発反応の特徴と難聴をおこす生理学的機序について考察した。 1. 全例でABR異常波形が観察された。 2. 腫瘍が小脳橋角槽に接していた5側のうち3側 (60%) でI波だけの波形, 1側でI波と低振幅のIII波が観測された。 3. 3例で蝸電図を記録したが, いずれも正常範囲であった。 4. ABRがI波だけとなったにもかかわらず, MLRやSVRの波形が記録される例があった。 橋グリオーマの初期診断にはABRが最も有効である。橋グリオーマによる聴覚障害は,...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 38; no. 1; pp. 87 - 95
Main Authors 船井, 洋光, 北原, 伸郎, 林田, 哲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 1995
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.38.87

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Summary:下部脳幹を含む橋グリオーマ5症例の蝸電図, ABR, MLR, SVRなど聴性誘発反応を検討した。その結果から橋グリオーマにみられる聴性誘発反応の特徴と難聴をおこす生理学的機序について考察した。 1. 全例でABR異常波形が観察された。 2. 腫瘍が小脳橋角槽に接していた5側のうち3側 (60%) でI波だけの波形, 1側でI波と低振幅のIII波が観測された。 3. 3例で蝸電図を記録したが, いずれも正常範囲であった。 4. ABRがI波だけとなったにもかかわらず, MLRやSVRの波形が記録される例があった。 橋グリオーマの初期診断にはABRが最も有効である。橋グリオーマによる聴覚障害は, 脳幹~聴神経近位部の聴覚伝導路への直接腫瘍浸潤による後迷路性難聴が主体と予想された。生理学的には同期性の消失が波形変化の主体と考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.38.87