Hemophilia Aに合併した脳内出血に伴う凝血病態の解析

血友病Aに合併した脳出血に伴う凝血病態の推移を検討した.症例は51歳男性.脳内出血発症約13時間後より濃縮第VIII因子補充療法を開始した.最も鋭敏なthrombin産生・作用の指標であるfibrinopeptide A (FPA) は補充療法開始前には全く増加しておらず, また補充療法開始とともに血中VIII : Cレベルは充分に維持されたにも拘らず第2病日までは殆ど増加しなかった.これに相応して脳内血腫量も著しく増大し病状も進行した.第3病日になってようやく明らかなFPAの増加がみられた. 脳出血発症後のthrombin活性の発現の遅延は血友病に伴う二次止血機転の発動の障害を反映し血腫の増...

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Published in脳卒中 Vol. 9; no. 3; pp. 273 - 279
Main Authors 新名主, 宏一, 丸山, 征郎, 井形, 昭弘, 松本, 秀也, 大勝, 洋祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 1987
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.9.273

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Summary:血友病Aに合併した脳出血に伴う凝血病態の推移を検討した.症例は51歳男性.脳内出血発症約13時間後より濃縮第VIII因子補充療法を開始した.最も鋭敏なthrombin産生・作用の指標であるfibrinopeptide A (FPA) は補充療法開始前には全く増加しておらず, また補充療法開始とともに血中VIII : Cレベルは充分に維持されたにも拘らず第2病日までは殆ど増加しなかった.これに相応して脳内血腫量も著しく増大し病状も進行した.第3病日になってようやく明らかなFPAの増加がみられた. 脳出血発症後のthrombin活性の発現の遅延は血友病に伴う二次止血機転の発動の障害を反映し血腫の増大と強く関連したことが示唆され, 本症例のように緊急的止血を要する重篤な出血性発作を保存的に管理する場合, 第VIII因子補充療法のみでは即時的止血機転の発動は生じ難く, thrombinや活性化第X因子を含有する活性型第IX因子製剤との併用療法が有効である可能性が推定された.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.9.273