急性大動脈解離におけるfibrinogen値と体外循環への影響
大動脈解離と凝固因子とくにfibrinogenに注目し,急性大動脈解離手術における出血量,輸血量を減少させる目的で当科で経験した発症24時間以内の大動脈解離症例100例をもとに検討を行った.大動脈解離では急性期にfibrinogenが低値であり,Stanford A型はStanford B型と比較して,広範囲解離(DeBakeyI型あるいはIII型逆行性解離)は限局解離(DeBakey II型)と比較して,偽腔開存型は偽腔閉塞型と比較して有意に低値を示した.また,発症後24時間以内のStanford A型急性大動脈解離手術34例において検討したところ,体外循環中の著明なactivated cl...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 32; no. 3; pp. 121 - 125 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.05.2003
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.32.121 |
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Summary: | 大動脈解離と凝固因子とくにfibrinogenに注目し,急性大動脈解離手術における出血量,輸血量を減少させる目的で当科で経験した発症24時間以内の大動脈解離症例100例をもとに検討を行った.大動脈解離では急性期にfibrinogenが低値であり,Stanford A型はStanford B型と比較して,広範囲解離(DeBakeyI型あるいはIII型逆行性解離)は限局解離(DeBakey II型)と比較して,偽腔開存型は偽腔閉塞型と比較して有意に低値を示した.また,発症後24時間以内のStanford A型急性大動脈解離手術34例において検討したところ,体外循環中の著明なactivated clotting time(ACT)の延長(ACT≧1,000秒)は輸血量の増加をもたらすことが判明した.ACTが著しく延長することを阻止する手段として,体外循環時のヘパリン投与量を300単位/kgと定めるのではなく,術前のfibrinogen値により50~250単位/kgで随時変動させ,ACTを400秒以上に維持したところACTは有意に低下し,fibrinogenが低値であってもACT値が適正値にコントロールされた.Fibrinogenは院内で測定でき,しかも短時間で結果が得られるため,この値によりヘパリン量を決定することは,Stanford A型急性大動脈解離手術でのACTをコントロールするうえで大きな役割を果たしていると考えられた. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.32.121 |