出血傾向を示した抗リン脂質抗体症候群の10歳女児例

症例は乳児期より出血傾向を認め, 10歳の時に血小板減少性紫斑病で入院し,精査の結果抗リン脂質抗体陽性SLEと診断しえた.患児の血小板数は6.0×103/μlと著減し, APTTの延長を示していた.ステロイドにて治療開始後血小板数は正常化した.梅毒血清反応の生物学的偽陽性反応,ループスアンチコアグラントおよび抗カルジオリピンIgG, IgM抗体は陽性であり抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たした.さらに抗核抗体陽性,蛋白尿,血尿を示すため,腎生検を施行した.腎組織像はループス腎炎(瀰漫性膜性糸球体腎炎)を示し, SLEと診断された.現在までステロイドによる治療をおこなっているが,検査上線溶系の...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 19; no. 3; pp. 244 - 250
Main Authors 新井, 盛夫, 河島, 尚志, 武隅, 孝治, 清水, 亨, 柏木, 保代, 木ノ上, 啓子, 星加, 明徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 30.06.1996
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.19.244

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Summary:症例は乳児期より出血傾向を認め, 10歳の時に血小板減少性紫斑病で入院し,精査の結果抗リン脂質抗体陽性SLEと診断しえた.患児の血小板数は6.0×103/μlと著減し, APTTの延長を示していた.ステロイドにて治療開始後血小板数は正常化した.梅毒血清反応の生物学的偽陽性反応,ループスアンチコアグラントおよび抗カルジオリピンIgG, IgM抗体は陽性であり抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たした.さらに抗核抗体陽性,蛋白尿,血尿を示すため,腎生検を施行した.腎組織像はループス腎炎(瀰漫性膜性糸球体腎炎)を示し, SLEと診断された.現在までステロイドによる治療をおこなっているが,検査上線溶系の亢進は認めず,血栓症症状は3年間の経過観察中認めていない.本邦における抗リン脂質抗体症候群に関する小児例の報告は少なく,まれな症例と考えられたため報告する.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.19.244