担い手が固定されないケアヘの注目一子育て支援政策の普遍化に向けた課題点と提案ー

本稿では,子育て支援政策をめぐり社会に起こりうる分断の可能性と,その克服への道筋を論じる。少子化や人口減少に対する危機感は長らく訴えられてきた。そうしたなか,政府による子育て支援政策は,より包摂性を高めることを目指して改革されつつあるように見える。これまでの政策では支援の対象にならなかった親が,支援の対象として目を向けられるようになったからである。政府はあからさまに「普遍主義」という言葉を掲げてはいないが,子育て支援政策はより普遍的なものに変化しつつあると評価できる。一方で,子育て支援の普遍化に対する人々の支持を得ることには,困難が伴うことが予想される。その理由は財政や人手,組織面等様々にある...

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Published in公共政策研究 Vol. 23; pp. 72 - 83
Main Author 安藤, 加菜子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公共政策学会 2023
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ISSN2186-5868
2434-5180
DOI10.32202/publicpolicystudies.23.0_72

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Summary:本稿では,子育て支援政策をめぐり社会に起こりうる分断の可能性と,その克服への道筋を論じる。少子化や人口減少に対する危機感は長らく訴えられてきた。そうしたなか,政府による子育て支援政策は,より包摂性を高めることを目指して改革されつつあるように見える。これまでの政策では支援の対象にならなかった親が,支援の対象として目を向けられるようになったからである。政府はあからさまに「普遍主義」という言葉を掲げてはいないが,子育て支援政策はより普遍的なものに変化しつつあると評価できる。一方で,子育て支援の普遍化に対する人々の支持を得ることには,困難が伴うことが予想される。その理由は財政や人手,組織面等様々にあるが,本稿は特に人々の価値観のありようからこの点を指摘する。勤労者としての自立を重んじる立場からの批判や,個別の事業レベルにおいて起こりかねない人々の支持が分かれることへの懸念である。そこで本稿では,普遍的な子育て支援政策として展開される事業を総体的に支持するための拠り所として,「担い手が固定されないケア」の価値に注目することを提案する。この提案がめざすのは,子育て支援政策の普遍化にあたって懸念となる支持の分断をやわらげることであり,公共政策学における規範的政策分析を用いた合意形成の支援の試みでもある。
ISSN:2186-5868
2434-5180
DOI:10.32202/publicpolicystudies.23.0_72