静注用Fosfomycinsodiumの臨床的研究
抗菌化学療法剤の進歩発達, 普及により, 感染症の様相も大きく変りつつある。現在主として使用されている抗生剤は, 幅広い抗菌スペクトラムと比較的大量使用が可能な安全性の点からPenicillin, Cephalosporinを主とするβ-Lactam系抗生剤である。特に最近におけるCephem系抗生剤の発達は目ざましく, より幅広い抗菌性と強力な抗菌力及び耐性菌の産生するβ-Lactamaseに対する抵抗性を有する新しい抗生剤が多数開発されてきている。このβ-Lactam系抗生剤は有用性の高い薬剤であるが, 副作用として時に重篤な症状を呈するアレルギー作用があり, 投与前に少量の薬剤にて皮内反...
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| Published in | The Japanese Journal of Antibiotics Vol. 38; no. 8; pp. 2057 - 2067 |
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| Main Authors | , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
1985
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| ISSN | 0368-2781 2186-5477 |
| DOI | 10.11553/antibiotics1968b.38.2057 |
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| Summary: | 抗菌化学療法剤の進歩発達, 普及により, 感染症の様相も大きく変りつつある。現在主として使用されている抗生剤は, 幅広い抗菌スペクトラムと比較的大量使用が可能な安全性の点からPenicillin, Cephalosporinを主とするβ-Lactam系抗生剤である。特に最近におけるCephem系抗生剤の発達は目ざましく, より幅広い抗菌性と強力な抗菌力及び耐性菌の産生するβ-Lactamaseに対する抵抗性を有する新しい抗生剤が多数開発されてきている。このβ-Lactam系抗生剤は有用性の高い薬剤であるが, 副作用として時に重篤な症状を呈するアレルギー作用があり, 投与前に少量の薬剤にて皮内反応テストを施行することが一般に行われている1虜。しかし救急患者等にてテストを施行する時間的余裕がなく, 緊急に抗生剤投与を必要とする場合もまれではなく, 又, アレルギー体質にてほとんどの薬剤で皮内反応が陽性となり, 有効な薬剤の選択に困難をきたすこともまれではない。 このためには, よりアレルギー反応の少ない安全性の高い薬剤が必要となつてくる。 Fosfomycin (FOMと略す) は分子量が小さく, 極めて簡単な構造式を有し, グラム陽性菌から陰性菌に及ぶ幅広い抗菌力を有し, 作用は殺菌的で, 化学的に安定であり, IgG, IgE抗体産生がなく抗原性は認められていない特異な抗生剤である。従つてアレルギー体質の患者にも安全に投与可能な薬剤と言える5-9)。 一方, 抗菌性化学療法を施行する際に, 起炎菌及び薬剤感受性による薬剤の選択, 投与量, 投与経路, 投与間隔の検討は常に留意せねばならない基本的問題点である。これらを検討する要因として, 起炎菌の感受性及び人体の血中濃度, 尿中排泄の動態が検索されてきていた。しかし化学療法において最も必要であるのは血中濃度ではなく, 目的とする炎症病巣内抗生剤濃度, 特にその動態であろう。これを人体内において検索することは非常に困難であり, 特に動態についてはほとんど不可能に近い。一般には動物実験により人体組織内濃度を推定しているのが現状である。 外科系の各科において, 治療上種々の組織を切除する機会がある. この機会を利用して抗生剤の組織内濃度を測定する試みは, すでに各種の薬剤について行われている。しかし, その例数は必ずしも多くはなく, 経時的に検索することは不可能で, 多数の測定値の集積から動態を類推する他はない。勿論, 薬剤の種類, 投与方法, 投与量によつて差異があり, 臨床的に感染病巣を切除する機会はごく限られており, これらの研究の個々が貴重なものと言える10-38)。 著者らは静注用Fosfbmycin sodium (FOM-Na) を若干の感染症患者の治療に使用し, その一部の患者の手術時にFOM-Na 2gを静注して, 手術中に採取した組織内及び体液中のFOM濃度を測定して, 若干の興味ある成績を得たので報告する。 |
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| ISSN: | 0368-2781 2186-5477 |
| DOI: | 10.11553/antibiotics1968b.38.2057 |