腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した真性胃癌肉腫の1例

胃癌肉腫はまれな疾患である.なかでも肉腫成分が明確な非上皮系成分への分化を呈し,癌腫成分との移行がない真性癌肉腫は極めてまれで本邦報告は10例,うちほとんどが死亡報告である.症例は53歳女性で吐血を主訴に受診した.上部消化管内視鏡にて4cm大の1型腫瘍を認め,高分化腺癌と診断され,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.病理結果では管腔形成が明瞭でサイトケラチン陽性の高分化型腺癌の部分と,間質に増生する紡錘型細胞からなる部分を認めた.紡錘型細胞は免疫組織学染色にてデスミンやビメンチンといった非上皮系細胞のマーカー陽性であり,上皮系細胞のマーカーに陰性であった.腺癌と肉腫成分の境界明瞭で真性胃癌肉...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 5; pp. 1110 - 1114
Main Authors 山下, 理子, 沖津, 宏, 木原, 歩美, 湯浅, 康弘, 沖津, 奈都, 古川, 尊子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.73.1110

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Summary:胃癌肉腫はまれな疾患である.なかでも肉腫成分が明確な非上皮系成分への分化を呈し,癌腫成分との移行がない真性癌肉腫は極めてまれで本邦報告は10例,うちほとんどが死亡報告である.症例は53歳女性で吐血を主訴に受診した.上部消化管内視鏡にて4cm大の1型腫瘍を認め,高分化腺癌と診断され,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.病理結果では管腔形成が明瞭でサイトケラチン陽性の高分化型腺癌の部分と,間質に増生する紡錘型細胞からなる部分を認めた.紡錘型細胞は免疫組織学染色にてデスミンやビメンチンといった非上皮系細胞のマーカー陽性であり,上皮系細胞のマーカーに陰性であった.腺癌と肉腫成分の境界明瞭で真性胃癌肉腫と診断した.肉腫に対する化学療法は確立されておらず,腺癌の成分はT1(sm), N1:stage IB(取扱い規約第13版)で,経過観察とした.術後5年間,無再発生存中である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.1110