新規変異によるMYH9異常症に伴う遺伝性FSGSから考察する遺伝子検査の重要性

我々は、30代前半で末期腎不全となり腹膜透析導入となった女性に母親からの生体腎移植術を施行した。家族歴から父・叔父・弟も慢性腎不全と判明した。患者本人、弟はともに10代から尿蛋白を指摘されていたが、途中でフォローを自己中断し、両者とも末期腎不全に陥った。腎生検は施行されていない。遺伝子検査の提案を受けた記憶はなく、検査を受けるという選択肢を考えたこともないとのことであった。本人・弟は未婚であったが、今後の人生においても、移植腎の管理の上でも原疾患が明らかな方が良いではないかと遺伝子検査を提案したが、希望されず。しかしある時、遺伝子検査を希望され、その結果、これまでに報告のない4959番目のグア...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s178_2
Main Authors 堀部, 祐輝, 宮下, 洋平, 中川, 勝弘, 貝森, 淳哉, 山中, 和明, 永田, 美保, 岸川, 英史, 石原, 康貴, 朝野, 仁裕, 吉田, 栄宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s178_2

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Summary:我々は、30代前半で末期腎不全となり腹膜透析導入となった女性に母親からの生体腎移植術を施行した。家族歴から父・叔父・弟も慢性腎不全と判明した。患者本人、弟はともに10代から尿蛋白を指摘されていたが、途中でフォローを自己中断し、両者とも末期腎不全に陥った。腎生検は施行されていない。遺伝子検査の提案を受けた記憶はなく、検査を受けるという選択肢を考えたこともないとのことであった。本人・弟は未婚であったが、今後の人生においても、移植腎の管理の上でも原疾患が明らかな方が良いではないかと遺伝子検査を提案したが、希望されず。しかしある時、遺伝子検査を希望され、その結果、これまでに報告のない4959番目のグアニンがシトシンに変異したMYH9異常症であった。父親が他院で受けた腎生検結果がFSGSであったことも判明し、原疾患をMYH9異常症に伴うFSGSと結論付けた。この疾患は一般的に血小板異常や感音性難聴など様々な症状を伴うが、この家系は腎機能障害を単独で発症していた。患者は腎移植後8年が経過しているが、尿蛋白の増加は認めず、良好に経過されている。弟は献腎登録をして血液透析を続けているが、遺伝子検査により早期介入が可能であれば、本人・弟ともに透析導入までの期間を延長できた可能性はあり、臨床医が遺伝子検査を提案することは重要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s178_2