小児生体肝移植症例における門脈再建法の検討
目的:肝移植術後の門脈狭窄や閉塞はグラフトロスや静脈瘤発生に繋がるため防ぐべき重要な合併症である。特に胆道閉鎖症の患者ではそのリスクが高いことが知られており、門脈再建に関して様々な工夫がなされている。そこで当施設の再建法の妥当性や最適な再建法を明らかにすることを目的とする。方法:2011年から2022年までに京都大学医学部附属病院で生体肝移植を受けた3歳以下の122症例を対象とし後方視的に検討した。術後に血管拡張術やステント留置などの治療介入が必要であった症例を門脈合併症の発生とし検討した。結果:門脈合併症は122例中10例(8.2%)に発生していた。全例胆道閉鎖症術後の症例であった。静脈グラ...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s319_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s319_3 |
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Summary: | 目的:肝移植術後の門脈狭窄や閉塞はグラフトロスや静脈瘤発生に繋がるため防ぐべき重要な合併症である。特に胆道閉鎖症の患者ではそのリスクが高いことが知られており、門脈再建に関して様々な工夫がなされている。そこで当施設の再建法の妥当性や最適な再建法を明らかにすることを目的とする。方法:2011年から2022年までに京都大学医学部附属病院で生体肝移植を受けた3歳以下の122症例を対象とし後方視的に検討した。術後に血管拡張術やステント留置などの治療介入が必要であった症例を門脈合併症の発生とし検討した。結果:門脈合併症は122例中10例(8.2%)に発生していた。全例胆道閉鎖症術後の症例であった。静脈グラフト間置群の方が間置していない群に比べ、門脈低形成、門脈逆流の症例が多かったが、門脈合併症の発生率に差はなかった(8.2% vs 8.3%, p=0.97)。胆道閉鎖症術後症例の85症例を、再建法の方針を変更した2017年前後で比較すると、患者背景は同程度であったが、静脈グラフト間置の割合が38%から68%と有意に上昇しており(p<0.01)、門脈合併症の発生率は19%から2.7%と有意に減少していた(p=0.035)。考察:静脈グラフト間置による門脈合併症の発生率上昇は認めなかった。胆道閉鎖症術後症例では、門脈の狭小化、硬化がみられることが多く、少しでも狭窄や硬化している部分は積極的に切除し静脈グラフトを間置することで、門脈合併症の発症を軽減できる可能性がある。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s319_3 |