未破裂のバルサルバ洞動脈瘤に隣接して発症した大動脈左室瘻の1手術例

症例は39歳女性で,学校および職場健診で異常心雑音を指摘されたことはなく,6年前に一過性の高熱の既往あり.3年前の会社健診で心雑音を指摘され心臓超音波検査(UCG)を施行,大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断された.経過中に徐々に心拡大傾向を認め精査となった.UCGではARIV,LVDd/Ds58/39,LVEF 60%,大動脈造影ではARIV,大動脈左冠尖(LCC)に2 cm程度のバルサルバ洞動脈瘤を認めたため,バルサルバ洞動脈瘤破裂に伴うARと診断し手術を施行した.手術所見上,大動脈弁は三尖で各弁尖には穿孔等の異常所見は認めず,大動脈右冠尖のLCCとの交連部寄りのバルサルバ洞根部に径6 mm大...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 42; no. 1; pp. 30 - 33
Main Authors 高橋, 俊樹, 須原, 均, 樋口, 卓也, 吉岡, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.01.2013
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.42.30

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Summary:症例は39歳女性で,学校および職場健診で異常心雑音を指摘されたことはなく,6年前に一過性の高熱の既往あり.3年前の会社健診で心雑音を指摘され心臓超音波検査(UCG)を施行,大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断された.経過中に徐々に心拡大傾向を認め精査となった.UCGではARIV,LVDd/Ds58/39,LVEF 60%,大動脈造影ではARIV,大動脈左冠尖(LCC)に2 cm程度のバルサルバ洞動脈瘤を認めたため,バルサルバ洞動脈瘤破裂に伴うARと診断し手術を施行した.手術所見上,大動脈弁は三尖で各弁尖には穿孔等の異常所見は認めず,大動脈右冠尖のLCCとの交連部寄りのバルサルバ洞根部に径6 mm大の瘤の入口部を認めたが瘤の破裂所見は認めなかった.これとは別に瘤に隣接して径5 mm大の左室への瘻孔を認め,同部位が術前画像所見でARと診断されたと考えられた.さらに瘤入口部と瘻孔入口部との間の稜線にはvegetationの治癒像を示唆する結合織塊を認めた.左室への瘻孔は直接閉鎖し,バルサルバ洞瘤入口部はパッチで閉鎖した.病理学的検査で結合織塊には好中球の異常集積を認め,大動脈左室間瘻孔の原因として感染性心内膜炎の関与が推察された.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.42.30