6.当科における咽頭弁形成術後の顎発育について

咽頭弁手術の顎発育への影響をみるため,経時的に撮影された頭部X線規格写真を用いて検討を行った.対象は1972年から1986年までに当科において10歳以下で咽頭弁手術を受けた患者の中から経過観察が可能であった11例である.比較には同時期に当科で口蓋裂1次修正術を受けた65例を対照群として検討した.その結果,SNAをはじめ,上顎前後径PT垂線から第1大臼歯までの距離上顔面高など上顎発育に関係する値については,咽頭弁群と対照群との間に差がみられなかった.対照群との問に差がみられたのは咽頭腔や軟口蓋の形態などの軟部組織に関する項目のみであった.今回の結果では,咽頭弁手術の影響は軟口蓋などの軟部組織まで...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 18; no. 1; pp. 42 - 50
Main Author 平野, 明喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 1993
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.18.1_42

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Summary:咽頭弁手術の顎発育への影響をみるため,経時的に撮影された頭部X線規格写真を用いて検討を行った.対象は1972年から1986年までに当科において10歳以下で咽頭弁手術を受けた患者の中から経過観察が可能であった11例である.比較には同時期に当科で口蓋裂1次修正術を受けた65例を対照群として検討した.その結果,SNAをはじめ,上顎前後径PT垂線から第1大臼歯までの距離上顔面高など上顎発育に関係する値については,咽頭弁群と対照群との間に差がみられなかった.対照群との問に差がみられたのは咽頭腔や軟口蓋の形態などの軟部組織に関する項目のみであった.今回の結果では,咽頭弁手術の影響は軟口蓋などの軟部組織までしか影響を与えず,上顎の発育には直接の影響をみることができなかった. しかし,咽頭弁手術症例の中には高度の上顎発育障害例もみられたことから,咽頭弁群内での比較検討を行った.咽頭弁手術例の11例中,7例が痩孔閉鎖などの何らかの口蓋裂2次修正を受けていたが,これらの患者は咽頭弁手術のみの患者に比球て顎発育障害がみられた.また,咽頭弁手術を受けた群と7歳以後に手術を受けた群を比較したところ,低年齢での手術群に顎発育抑制がみられた.咽頭弁手術の顎発育へ及ぼす影響には,口蓋裂の裂型や口蓋裂1次手術をはじめとして多くの因子の関与が考えられるため,有限要素法を用いてシュミレーションを行った.その結果,咽頭弁を伸展性のない索状物として想定した揚合,咽頭弁は上顎発育のみならず,外鼻形態の変化を生む可能性が示唆された.当科における咽頭弁手術症例数が少なく,確定的な結論とはいいがたいが,10歳以下の小児においても咽頭弁手術が顎発育を抑制するとは限らないものの,低年齢手術例では顎発育障害の可能性は否定できないと思われた.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.18.1_42