片側性完全唇・顎・口蓋裂の成人未手術例1術前の咬合状態,頭蓋・顔面の形態的ならびに口腔の機能的所見

26歳11カ月まで,口唇裂および口蓋裂が共に未手術のままであった片側性完全唇・顎・口蓋裂患者(女子)の初診時の咬合状態,頭蓋・顔面の形態的所見ならびに嚥下時における舌の機能的所見について報告した. 咬合所見:前歯部,臼歯部共に正常な被蓋関係を呈し,形成手術の患者に一般的な著しい咬合の異常は認められなかった. 頭蓋・顔面の形態的所見:1)頭部X線規格写真により,非破裂者群の平均と比較した結果、前頭蓋底の前後径は変らず,上顎部は前後的に過成長を示し,前頭蓋底に対して前方位をとったが,下方へは劣成長を認めた.また,下顎については,形成手術後の患者の平均像である下顎枝高の短小,下顎角の開大,下顎下縁平...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 8; no. 1; pp. 105 - 115
Main Authors 北村, 隆, 垣内, 康弘, 保田, 好秀, 和田, 健, 土屋, 雅文, 前田, 早智子, 中川, 浩一, 島田, 純治, 堀坂, 孝, 杉村, 正仁, 吉田, 建美, 足立, 敏, 作田, 守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 1983
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.8.1_105

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Summary:26歳11カ月まで,口唇裂および口蓋裂が共に未手術のままであった片側性完全唇・顎・口蓋裂患者(女子)の初診時の咬合状態,頭蓋・顔面の形態的所見ならびに嚥下時における舌の機能的所見について報告した. 咬合所見:前歯部,臼歯部共に正常な被蓋関係を呈し,形成手術の患者に一般的な著しい咬合の異常は認められなかった. 頭蓋・顔面の形態的所見:1)頭部X線規格写真により,非破裂者群の平均と比較した結果、前頭蓋底の前後径は変らず,上顎部は前後的に過成長を示し,前頭蓋底に対して前方位をとったが,下方へは劣成長を認めた.また,下顎については,形成手術後の患者の平均像である下顎枝高の短小,下顎角の開大,下顎下縁平面の急傾斜,オトガイ部の前頭蓋底に対する後方位は認められず,非破裂者群の平均と比べて下顎枝高,下顎角は標準偏差内にあり,前頭蓋底に対するオトガイ部の位置はむしろ前方位をとり,下顎下縁平面は平坦化を示した.2)モアレ写真により顔面形態を検討した結果,鼻尖部は健側に偏位していた. これらの事実より,乳幼児期の形成手術は咬合状態ならびに口腔・顔面の成長に大きな影響を与えるということ,また,裂を有する個体の顔面の成長能力は,垂直方向の成長に関しては疑問が残るものの,前後方向には非破裂者より劣るものではないことが示唆された, 発音:著しい開鼻声であった. 舌の機能的所見:1)X線映画で嚥下時の舌の動きを検討した結果、舌背を高くして食塊の鼻腔への流入を防ぎ,食物を口腔底に蓄え,舌の側縁を経て嚥下する特異な嚥下パターンが認められた.2)嚥下時の舌の筋電図所見によれば,舌筋の放電持続時間は非破裂者よりきわめて長くかつ多相性の放電パターンが認められ、複雑な舌運動をすることが示唆された.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.8.1_105