症例 増悪する心不全症状を呈したScimitar症候群の1乳児例

症例は1カ月の男児.多呼吸・体重増加不良・右胸心で発見された.入院時に軽度の低酸素血症を呈していたが,比較的全身状態は良好であった.2カ月時に施行した心臓カテーテル・造影検査では,右下葉領域に細い右肺動脈と下行大動脈からの側副血行路が流入していたが,右肺静脈の還流は不明であった.主肺動脈収縮期圧(PA圧)74mmHg.肺対体血圧比(Pp/Ps)1.0の高度肺高血圧を認めた.肺対体血流比(Qp/Qs)1.7・肺対体血管抵抗比(Rp/Rs)O.5,肺小動脈抵抗(PAR)3.5U・m2であった.その後心不全症状が増悪したため,4カ月時に心臓カテーテル検査を再施行した.異常体肺側副血行路からの造影で,...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 11; pp. 1128 - 1133
Main Authors 田村, 真通, 高田, 五郎, 伊藤, 忠彦, 豊野, 学朋, 原田, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.11_1128

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Summary:症例は1カ月の男児.多呼吸・体重増加不良・右胸心で発見された.入院時に軽度の低酸素血症を呈していたが,比較的全身状態は良好であった.2カ月時に施行した心臓カテーテル・造影検査では,右下葉領域に細い右肺動脈と下行大動脈からの側副血行路が流入していたが,右肺静脈の還流は不明であった.主肺動脈収縮期圧(PA圧)74mmHg.肺対体血圧比(Pp/Ps)1.0の高度肺高血圧を認めた.肺対体血流比(Qp/Qs)1.7・肺対体血管抵抗比(Rp/Rs)O.5,肺小動脈抵抗(PAR)3.5U・m2であった.その後心不全症状が増悪したため,4カ月時に心臓カテーテル検査を再施行した.異常体肺側副血行路からの造影で,右房と下大静脈の合流部への右肺静脈還流異常が判明し,Scimitar症候群と診断した.Qp/Qsは4.6と増加し,肺血流量増加が心不全の主な原因と考えられたため,側副血管に対して経皮的コイル塞栓術を施行した.塞栓術後全身状態の著明な改善を認めたが,依然肺血流量は多く,動脈管結紮術を施行し良好な結果を得た. Scimitar症候群は比較的まれな疾患で,多くの場合無症状に経過する.しかし新生児期および乳児期早期に重篤な症状で発見される症例も存在し,このような症例では,時機を逸せずに異常体肺側副血行路に対する処置が必要と思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.11_1128